ろま中男3 作品リストみなしごルリイ パパと呼ばないで 目次みなしごルリイ パパと呼ばないで (6)母の恋の顛末
「わかった、そういうプレイでしょ…、いいよ、オジサンの娘になってあげる」
シチュエーション、プレイってヤツ…、お金持ちの変態プレイ、ってコトよ…。
バスタオル一枚カラダに巻いたルリイが、おどけながらソファに腰掛けた豪徳寺に抱きついた。
みなしごとして恵まれない境遇を意識しながら生きてきたルリイは、夢や希望で寂しい気持ちを紛らわせることはあっても、現実を直視する至極まっとうな考え方を身につけていた。
降って湧いたようなシンデレラストーリーに現実感が希薄なエンコー美少女はやや混乱気味で、冗談めかしてムリして陽気に振る舞っていた。
「ルリイ、座って、私の話を聞いてくれ」
バスタオルからあふれそうな胸を押しつけてワザとらしくおどけてみせるルリイを、豪徳寺が真剣な顔で見つめる。
「はい…」
やだ…、コワイよ…。
中年紳士が漂わせる威圧感に圧倒されたエンコー美少女は、まるでノースリーブの超ミニワンピのように、しっとりした肌の新鮮な女体をボディコンシャスに覆ったバスタオル姿で、ソファにちょこんと座った。
有無を言わせず多くの人間を従わせる、頂点に立つ者だけが持つ重厚な威厳をまとった紳士に、ルリイはすっかりしおらしくなっていた。
父娘宣言を果たした豪徳寺は、もはやほったらかしにした娘の一挙手一投足にビクつくヘタレオヤジではなかった。
「瑠美は美しかった」
神妙に座るルリイに瑠美の面影を見ているのか、目を潤ませて小さくうなずいた豪徳寺は瑠美との思い出を語りはじめた。
「そして外見に負けないほど、心のキレイな女だった」
低く響く自信に満ちた声は、瑠美という美しい女性を神のように絶対的なモノとしてあがめる、熱狂的な信者のそれだった。
…、お母さん、キレイだったな…。
豪徳寺のバリトンな声を聞きながら、ルリイも母を思い出していた。
セピア色ににじんでいるが、ルリイの記憶の中にいる母は優しくてキレイな人だった。温かい腕の中に抱かれたルリイは、優しい笑顔で見つめられて幸せな空気に包まれていた。
「私は瑠美に夢中だった」
出会った頃の瑠美にそっくりなルリイに気が昂ぶっているのか、語り出した豪徳寺の熱弁は止まらなかった。
遠縁だという老夫婦の食堂で働いていた瑠美に、学生だった豪徳寺が一目惚れしたこと。
勉強が手につかず、いてもたってもいられずに熱い想いをぶちまけたこと。
はにかみながら微笑んで、豪徳寺の気持ちを受け入れてくれた瑠美のこと。
いつも笑顔の瑠美はまばゆいばかりに美しく、一緒にいるだけで幸せだったこと。
資産家の息子だと知った瑠美が急に冷たくなって、豪徳寺と徐々に距離を置くようになったこと。
瑠美が突然姿を消して、世界がすべて色を失ってしまったような絶望感を味わったこと。
そしてその時、瑠美のお腹にはルリイがいたこと。
時々目を潤ませて取り乱したりもしたが、豪徳寺の語る母との恋の一部始終はだいたいこんなモノだった。
「はあ…」
お母さんが、情熱的な恋をして…、私が…。
15年以上経っても色あせない思い出を情熱的に語る中年紳士の熱気にあてられたルリイは、ゆっくりため息をついた。
中年紳士の飾らない情熱的な言葉に圧倒されたルリイは、もう疑う気持ちなど微塵もなかった。優しかった母が熱い恋心に身を焦がし、そして自分が生まれたたことがなんだかうれしかった。
「でも…」
だったら、結婚すればいいじゃない…、なんでしなかったの…
母の情熱的な恋物語に感激して大きな目を潤ませていたルリイだったが、愛するが故に身分違いを意識した娘が身を引く、という前時代的な思いやりに満ちた愛の形が理解出来なかった。
「結局、お母さんは、捨てられたのね…」
…、そうよ、だから、お母さんは、ひとり寂しく死んで…、それから私は、天涯孤独…。
スベスベした匂い立つようなナマ太ももの根元しか隠してない、バスタオルのスソをギュッと握ったエンコー美少女は、今日までの家族の愛に飢えた暮らしの責任がすべて豪徳寺にあるかのように、涙を溜めた大きな目でにらみつけた。
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