ろま中男3 作品リスト真央 目次真央 (77)見知らぬ街
「真央ちゃん、着いたよ、よく寝てたね」
沢村の声に目を覚ました真央は二枚目顔がキスしそうなほど迫って来るのを見て、思わず後ずさっていた。
「あ、ごめん、おどかした?…、マオを出すから、待っててね」
シートから抜け出した沢村が外に出る。薄暗い窓の外に通行人が歩く姿が見えるが見慣れない町並みだった。時計を見ると2時間弱寝ていたようだ。
あれ?…、これって、…。
前面のウインドスクリーンは真っ黒になっていたが、光が差し込んできてトランクらしい薄暗い景色が写った。次に沢村の顔が大写しになったが、時折ほんの一瞬だけ真っ暗になる。
マオの視界?…。
暗くなる瞬間がまばたきだとわかった真央は、目の前の風景がマオの目に仕込まれたカメラから送られる映像だと気付いた。
「お待たせ…、異常ないね」
戻ってきた沢村はウインドスクリーンに映る映像に満足そうにうなずくと、ゆったりとバケットシートに身を沈めた。
「ここ、どこ?」
車を停めた路地から出たマオはネオンが灯りはじめた繁華街を歩いているようだ。町並みのなんとなくハデな雰囲気に、ある場所を思い浮かべた真央だったが時間的に移動が無理な気がして、いつもの柔和な二枚目顔でスクリーンを眺める沢村に聞いてみた。
「あれ、言ってなかった?…、○×だよ」
沢村は意外そうに応えると日本で第2の都市名を口にした。
「そう…」
やっぱり…、でも2時間で?…。
真央の予想は当たっていた。しかし昼までいた都心からここまで2時間で来るには、一昔前のリニアを使ってどうにか間に合うぐらいで、車では絶対無理な気がした。
さすがは、超高級外車って、こと?…。
F1の血を引く100周年記念モデルならではの離れ業なのだろうと、なんとか自分を納得させた。しかし法定速度を守るオートドライブでは無理なはずで、沢村が実はF1ドライバー並みのテクニックの持ち主だということまでは、真央も気が回らなかった。
「でも、なんで?」
わざわざ数百キロも離れた街に連れてこられた理由がわからない真央が聞くと
「真央ちゃんを、知ってる人がいたら、困るでしょ」
相変わらず柔和な表情の沢村が当たり前のように応える。
??…。
どうして自分を知ってる人がいると困るのか、聞きたかったが沢村の当然だと言わんばかりの口調に気圧されて、それ以上は聞けなかった。
スクリーンに突然中年男のニヤついた顔が大写しになった。あまりアップで見たくない顔に怖じけた真央が目を伏せると、指を鳴らす音がして音声が聞こえてきた。
「…、なんぼなん?…、えっらい安いなあ…、人間やろ?…、病気、もってへんやろな」
中年男の臭い息がしてきそうな浮ついた声が聞こえてくる。どうやらマオをコールガールだと勘違いした男が近寄ってきたらしい。マオが本物の風俗嬢ならあり得ない破格値を応えると、中年男はビックリしながら、イヤらしい笑いを浮かべてマオのカラダを舐め回すように視線を泳がせて視姦する。
やだ…、いやらしい、…。
マオに向けられる視線がまるで自分に向けられているように感じた真央は、中年男を切れ長の目のハシで見て生理的嫌悪感を覚えながら、カラダの奥が熱くなるのを感じていた。
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