裏ろま中男 作品リスト交渉人涼子 目次交渉人涼子 Negotiator Ryoko
11話 死なないで…、交渉人涼子よ永遠に (39)
翌朝、涼子の作った朝食をうれしそうに平らげた山田と一緒に通勤した。バイクはアブナイと山田が心配そうに言うので涼子はそれに従って電車で出勤した。復帰の挨拶を課長にした涼子は、山田を呼んで一緒に婚約の報告をした。山田の刺傷事件以来、課長を信頼する涼子は山田と相談して、課長に仲人を頼むと決めていたが、課長は仲人役を快く承諾した。笹野にも結婚の話をすると、そうか残念だ、と悲しそうな顔をしながら、涼子のお尻に手を回してさすっていた。笹野さん、涼子の冷たい視線に、わかってるよ、とセクハラオヤジの顔で笑った笹野は、おまえが結婚するまでにはやめるから、とシワクチャの顔をゆるませていた。
弥生の裁判が始まって涼子は裁判の成り行きを見守っていた。嘆願書が効いたのか、有罪にはなったものの、執行猶予がついて弥生は実家に戻った。実家に帰る前に弥生は涼子を訪ねていた。涼子に会いに来た弥生に、心配した山田が付き添っていた。涼子さん、すいませんでした、と弥生は深々と頭を下げた。許してもらえないのは、わかってますけど…、すいませんでした、弥生は頭を下げたまま、泣いていた。山田が慰めようと近づくのをさえぎった涼子は、許さない、とつぶやいた。
涙に濡れた悲しそうな顔を上げた弥生に、あなたが今みたいな不幸な女を続けるのを、私は許さない、…、幸せになりなさい、…、大切な人を見つけて、あなたが幸せな家庭を築くことが、私への罪滅ぼしよ、涼子の厳しい口調に弥生は黙って聞いていたが、その時は会いに来てね、と笑った涼子に、…、約束します…、きっと…、と弥生はその場に泣き崩れた。それ以来弥生には会っていないが、涼子の入院費などは涼子の親が支払った。弥生の父は慰謝料を払おうとしたが、涼子は断った。
海外の親に婚約の報告をすると、慌ててチケットを手配した夫婦は揃ってフランクフルトから山田に会いに来た。セレブな夫婦に初めて会った山田は終始恐縮していたが、この子、ワガママでしょ、よろしくお願いしますね、と優しく笑う母親の言葉に、任せてください、必ず涼子さんを幸せにしますっ、と山田は胸をはって応えた。
山田の両親にも会った。年上を心のどこかで気にしていた涼子だったが、姉さん女房は金のわらじを…、などといわれて涼子は山田の家族から喜ばれて迎え入れられた。美人の涼子に、いい嫁さんだ、と息子が一人前になったことを喜ぶ山田の父はうれしそうにヤニさがったバカ面で笑っていた。涼子は山田のバカ面は父親譲りなのだと笑いをかみ殺していた。
幸せな結婚式を挙げた涼子は臨月から1年ほど産休して育児に専念した。その後、警察に復帰して準キャリアとして活躍するが、それはまた別の話…。
交渉人涼子 2008年8月2日 完 / 2009年2月5日 加筆修正完
2010年9月2日追記 (素人の法解釈)
弥生が涼子を刺した行為は殺人未遂罪(殺人罪に準ずる)が相当なので、懲役5年以上の実刑になり、執行猶予はつきません(執行猶予が付くのは3年以下の懲役判決に対してです)。
ただ過去に殺人未遂の裁判で嘆願書や事情を考慮して3年以下の懲役判決(執行猶予付き)の例もあるので、弥生に執行猶予がついたという記述はそのままにしてます。
また傷害罪は15年以下の懲役なので、3年以下の判決なら執行猶予がつきます。弥生は初犯で過去に罰金刑などない(そうでないと警察官に採用されません)ので、3年以下の懲役判決なら執行猶予がつきます。
調書を作成した笹野は、逮捕時に「涼子を殺した」と自白した弥生が心神喪失に近い状態と判断し、被害者本人である涼子の「弥生に殺意はなかった」という主張を全面的に採用し、傷害罪で送検したという設定にしています。
本文中の「嘆願書が効いた」というのは涼子の個人的な感想であり、判決に大きな影響はありません(ただし被害者本人の嘆願書なので、多少は考慮されます)。
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