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ブリとブラ 目次ブリとブラ (15)英雄の帰還
「唯っ、助けてっ」
女子更衣室を逃げ出した律は音楽準備室に飛び込んだ。しかし今は授業中で準備室には誰もいなかった。
「あれ、りっちゃん、どうしたの?」
2限目の授業中だった唯は、準備室から切迫した表情でのぞき込む律を見て
「みんな、ちょっと待っててね」
生徒たちに自習するように声をかけて準備室に入った。
「お、大山が…」
唯にすがりついた律は、こみ上げる嗚咽を飲み込んで、強姦未遂事件をなんとか伝えようとする。
「おおやま?…、体育の大山せんせい?…」
すがりつく律の手がガタガタ震えていた。なにかとんでもないことが律の身に起きたのは、鈍感な唯にもすぐにわかった。
「大山に…、襲われたの…」
律の身に起きた何らかの異変に緊張して表情を固くする唯を、涙に潤んだ目で見上げた律はそこまで言うのがやっとだった。
「襲われた…って、襲われたのおっ?」
詳しく説明は出来なくても、少女のように怯えて震えるか細いカラダがすべてを物語っていた。しかし学校でそんなことが起きるなんて信じられない唯は、思わず聞き返していた。
「う、うん…、うわああんっ」
もう限界だった。唯に抱きついた律はお母さんのような柔らかい胸に安心したのか、緊張の糸が切れて子供のように大声を上げて泣いた。
「えっ、や…、りっちゃん、泣かないでえっ」
元気者の律がこんな風に泣くなんて、10年近いつきあいで初めてだった。最初はビックリした唯も、その悲しい嗚咽にもらい泣きして、震える背中を優しくなでていた。
おい、アイツ…。
ブリは唯にすがりつく手に握られた律パン(仮)を見て、ブラに声をかけた。
ああ…。
背中のブラ線あたりに置かれた手に律パン(仮)は握られていた。すでに骸となった律パン(仮)のズタズタに切り裂かれたカラダを服越しに感じるブラは、言葉少なく応えた。
ブリとブラは律パン(仮)を知っていた。唯が律と一緒に下着を買いに行ったとき、律パン(仮)は律に見初められ、ブリとブラは唯に見初められた。同じ棚に置かれていた彼らは同期というより、兄弟のような存在だった。
アイツ…、りっちゃんさんを…、守ったんやな…。
泣きじゃくる律の悲しい嗚咽がブリの胸に突き刺さる。ブリは律パン(仮)が体を張って律を守ったことを、下着の本能で理解していた。
ああ…、命をかけてな…。
服の薄い生地を通して律の嗚咽を直接感じるブラは、律の手の中で幸せそうな死に顔を見せる律パン(仮)が、ご主人様を守るという下着としての仕事を、命と引き替えにやり遂げたことも付け加えた。
…、えらいやっちゃで…、ホンマ、男の中の男や…。
律パン(仮)は与えられた使命を見事全うし、男子の本懐を遂げた。そんな彼に羨望の混じった感動の涙を禁じ得ないブリが、心からの賛辞を送っていた。
ああ…、こんな風になるのを、覚悟の上で…、
人間離れした馬鹿力で見る影もなく引き裂かれ、ボロ布のような律パン(仮)のカラダを感じるブラは、
ホントに…、立派なヤツだ…。
ご主人様を守りたい一心で、バケモノのような真性性欲異常者に勇気を振り絞って立ち向かっていった、律パン(仮)のビジョンが見えていた。
そやな…、悔いはない、はずや…
巨大で邪悪な存在から唯を守り抜いた英雄を、湿っぽく見送るのは失礼だとブリは思った。あふれる涙をこらえて、そう自分に言い聞かせていた。
ああ…、
ブリと同じように男の別れに涙は禁物と顔を上げたブラは、
いつか、コイツと同じところに行ったら…、ほめてやろう…。
ブラリサイクルなどで回収された下着のごく一部、我が身をなげうって奉仕した英雄たちだけがたどり着くと信じられている、下着の靖国あるいはヴァルハラと呼ばれる場所を思い浮かべていた。
「りっちゃん、ちょっと座ってて…、警備室ですか?…」
嗚咽が少し落ち着いたのを見計らった唯は、律を抱きかかえるようにソファに座らせると、警備室に電話した。
要領を得ない電話だったが、唯の切羽詰まった声に慌てて駆けつけた警備員は、律からも話を聞いて女子更衣室に向かった。
あまりの激痛に気を失っていた大山は、警備員たちにフルチンのまま縛り上げられたが、筋肉まみれの巨体が移動できずにしばらく女子更衣室は使用禁止になっていた。
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