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== 交渉人涼子2 ==

交渉人涼子2 3話 劇場立て籠もり事件(1)

ろま中男3 作品リスト
交渉人涼子2 目次

交渉人涼子2 3話 劇場立て籠もり事件
(1)看板娘

大音量の音楽が鳴り響く舞台の中央から張り出した円形の小舞台、通称「でべそ」で踊るダンサーに、男たちが音楽に合わせて拍手しながら、かぶりつきで熱気のこもった異様な目を輝かせて見上げていた。黒く塗られた低い天井の梁に片手を当ててスリムな女体を支え、もう一方でハードルを飛び越える時のように、膝を曲げて水平に上げた片足を持ち上げた全裸のダンサーは、音楽に合わせてリズミカルに女体をくるくる回して踊ると、ピンク色の花びらとその奥を男たちにまんべんなく見せつけていた。

まばゆいスポットライトに照らされる力の入った踊りと男たちの熱気で、全身から吹き出した汗を輝かせた白い裸体を、闇の中で熱心に拍手する男たちの多くの鋭い目が見つめるという、異様な雰囲気が劇場を支配していたが、常連たちには当たり前の光景だった。たまに誰かが席を立つのが目につくが、劇場を出るのではなくほぼ全員がトイレに向かった。

「莉菜ちゃ?ん、足、もうちょっと広げて」、
「莉菜ちゃん、こっち、むいて」
音楽が終わり異様な喧噪が納まってポラロイドショーの場内アナウンスが流れると、口々に声をかける男たちのインスタントカメラのフラッシュが、踊り子のスリムな女体を照らしていた。お菓子のしょぼいプレゼントを渡す、どう見ても60過ぎのオジサンはうれしそうにヤニ下がって莉菜と握手していた。

景山莉菜は道玄坂劇行の看板娘だった。アイドル顔で人気を博した先輩ダンサーが引退した後、その跡を継いだ莉菜は先輩のファンを引き継いで押しも押されもせぬトップダンサーになった。アイドル路線の大本命と言われた莉菜目当てに劇場には新旧多くの客が詰めかけた。おかげで出番の早い若手ダンサーの紳士的な客席の雰囲気と、莉菜の熱気のこもった喧噪が対照をなしていた。ポラロイドショーでファンと記念撮影する最中に、花束やぬいぐるみ、チョコやお菓子などかかえきれないほどプレゼントが莉菜に渡されていた。

全裸のまま楽屋に戻った莉菜は、汗を拭き取って制汗剤とコロンを軽く吹きかけると新しい下着に履き替えてから、山のようなプレゼントを整理した。人気ダンサーの莉菜には特別に個室の楽屋が割り当てられていた。
「はあ?」
ミネラルウォターでノドを湿らせた莉菜は大きく息をつくと、歌舞伎の鏡獅子のような白い髪のカツラと金糸銀糸で飾られたハデな衣装を取りだして、次の舞台の準備をしていた。

少女のような華奢な女体には大きすぎるほどのハデな衣装を着込む莉菜を、花束の山の下から陰湿そうな鋭い視線が見つめていた。莉菜の熱烈なファンである斉藤は、今日とうとう莉菜の楽屋に忍び込むのに成功した。業者のフリをして舞台裏に入り込んだ斉藤は、莉菜の楽屋を見つけて狂喜した。うまく楽屋に入り込んだ斉藤は花束の山の下に身を潜めて、莉菜が出番から戻ってくるのを、胸を高鳴らせて心待ちに待っていた。

次のステージの準備を整えた莉菜は、幼い顔に似合わないタバコをくゆらせながら出番を待っていた。斉藤は莉菜と同じ空間で同じ空気を吸っているだけでも幸せだった。そうしているうちに出番の前に頼んでいたのか、出前のラーメンが届いた。

莉菜ちゃんは、ラーメン食べる姿もカワイイ、…。
花束の陰から様子をうかがっていた斉藤は、カツラと衣装を汚さないように片手で押さえながら、ツルツルと数本づつ麺をすする莉菜を眺めてウットリしていた。

しばらくすると呼び出しがかかり、鏡に向かって気合いを入れた莉菜が舞台に向かった。

作者注:お気づきかもしれませんが、この話に出てくる道玄坂劇場は渋谷道玄坂の道頓堀劇場(95年の立ち退き閉館前)をモデルにしています(ただしポラロイドショーなど再開後のサービスも参考にしてます)。景山莉菜は「伝説の踊り子」と呼ばれた影山莉菜がモデルです。

交渉人涼子2 3話(2) につづく
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