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== 女子校生由貴 ==

女子校生由貴 (338)幽霊のすすり泣き

裏ろま中男 作品リスト
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女子校生由貴 (338)幽霊のすすり泣き

「なんですか?…」
タダシの視線に気付いた由貴はカワイイ笑顔を向けた。窓越しにふざけて伊豆の踊子のマネをさせた事を思いだしていたタダシは、うれしそうに笑う由貴のカワイイ横顔を見てドキドキして、そして優しい気持ちになっていた。

「…、チュー、したいか」
冷酷なご主人様モードの時はどんなヒドイ事も平気で言えるのに、こんな気持ちの時はとたんにヘタレ少年の性根が顔に出ていた。
「はへ…、し、したい、ですう…、チューして、くだたい」
いつものタダシらしくない口調を意外に感じて思わず寄り目になった由貴は、すぐにタダシの気持ちを理解した。高校生らしいキスを想像してドキドキして目を閉じると唇を突き出していた。うれしさのあまり、また舌足らずにロレツがおかしくなっていた。

「…、オマエはホントにバカだな…」
プックリした唇を気持ち突き出す由貴のカワイイ顔を見つめたタダシは、つい思ったまま口に出していた。
「へ…、あううっ…、由貴は、バカですう…」
からかわれたと思った由貴は、わずかにまぶたを開けて伏し目がちに下を見ながら、うかれた自分を恥じて落ち込んでいた。

「バカ女…」
目を閉じたうれしそうな表情を急に暗くして落胆の色をありありとみせる美少女に、かすかに笑いを含んだ声を漏らしたタダシは、女の子座りするカラダを引き寄せてキスした。
「あっ…、う…」
あうっ…、チュウ、されちゃったあ…、うれしい…。
乱暴に引き寄せられていきなり唇を奪われた由貴は、驚いたように目を見開いたがすぐに閉じてうれしそうな笑みを浮かべてタダシに抱きついていた。

タダシはどんなにヒドイ事をしても慕ってくる由貴の、悪く言えば鈍感な忠犬のような態度につい「バカ」と口走っていたが、そんな由貴がいとおしくてかわいくてたまらなかった。省吾の件以来、何かの折りに自分のダメ男ぶりが頭に浮かんで落ち込んでいたタダシは、無条件に愛情を示してくれる由貴がいてくれるおかげでなんとか虚勢を保っていられた。

「なにか、聞こえないか…」
柔らかい美少女の唇をしばらく味わっていたタダシは、急に顔を離すと平板な声で問いかけた。
「あう、うきゅうっ…、はい?」
きつく抱きしめられたキスにウットリしていた由貴は、突然突き放された気がして不満混じりに一抹の不安を感じたが、それを顔に出さずにご主人様に聞き返していた。テレビからは低めのボリュームで三浦友和や山口百恵の声が相変わらず流れていた。

「下…」
タダシは床に目配せしながら短くつぶやいた。
「?…、あ…、あんっ」
耳をそばだてると確かに床の下から猫の鳴き声のようななにかが聞こえてくる。タダシは由貴を抱いたまま静かに立ち上がった。由貴は抱かれたまま、音を立てないように歩くタダシについて部屋を出た。

「(聞こえる…)」
「(はい…)」
鍵がかかっているので開かないドアノブを回したタダシに代わって、由貴がドアを開けるとさっきよりはっきりと子猫の鳴き声のような、悲しい女の泣き声のようななにかが聞こえる。声をひそませるタダシに合わせて由貴も小声で答えた。

「おばけ…」
幽霊のたぐいのコワイ想像を浮かべた由貴は、つい普通につぶやいてタダシに抱きついていた。
「(バカ)」
「…(ごめんなさい)」
タダシもそのたぐいの想像を浮かべたが先に言われて、ビビる自分を奮い立たせる意味でも、わざとらしく顔をしかめて由貴を見た。ギュッと抱きついた由貴は恐縮してぎこちなく笑うと、照れたように舌を出していた。

音を立てないように廊下をたどったタダシは階段から階下を伺っていた。この時点でタダシはその声の正体に見当を付けていたが、怖がる由貴をおもしろがってわざと黙っていた。

「(由貴、どんな事があっても守ってやるから、ちゃんとついて来いよ)」
それどころか由貴をからかってやろうと企んだタダシは、わざとらしく表情を引き締めて男前のセリフをつぶやくと、由貴を見つめた。
「(はい…)」
いつものご主人様らしくない優しい男らしい態度にウットリした由貴は、声の正体などどうでも良くなって、頼もしい背中を見ながら階下に降りていった。

階下に降りたタダシは音を立てないように静かに声のする方に向かっていった。タダシが立ち止まり聞き耳を立てる。タダシの後ろに隠れた由貴はそこが浩太朗たちの寝室だと気付いた。

かすかに開いた戸のスキマから漏れる声が、あのときの声だと確信したタダシに対して、
なんだろう?…、やっぱり、幽霊?…、お母さんたち、どうなったんだろう?…。
由貴はなんで夫婦の寝室から幽霊みたいな声がするのが不思議だった。そのわけを聞きたかったがタダシが真剣に神経を集中させている(ように由貴には見えた)ので、黙ってタダシが声をかけてくるのを待っていた。

女子校生由貴(339) につづく
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