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温泉旅館 (44)女将の心配

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温泉旅館 (44)女将の心配

「それって山奥の、弁天様を祀った古びた神社ですか…」
ますます深刻な表情をみせる女将は、私の目をのぞき込むように聞いてきた。

「…、ああっ、弁才天が祭神だと言ってたな」
女将のまじめな顔にチョット引っかかったが、私はあのときのことを思いだしながら応えた。女将はキスしそうなほど近寄って心配そうに見つめていた。
「あの、まさかと思いますが、先生、そこで…、あの…」
さっきまでの明るい表情が消えた女将の顔がだんだん暗くなって、重苦しい声が問いかけてきた。

「…、そこで?」
私は不安そうな女将に聞き返した。女将のただならぬ雰囲気に元気だった息子もすっかりしょげかえっていた。
「その、セックスとか…、なさってないでしょうね」
真顔で乗り出してきた女将がまじめに聞いていた。

「セックス…、あ…、ああっ」
あのときの記憶はどうもぼんやりしているが、真由を強引に貫いてさんざんよがらせたときの様子が蘇ってきて、私はニヤついてバカ面をさらしていた。
「…、してしまったんですね」
私のバカ面をまじめな顔で見つめた女将は、小さくため息をついた。

「…、それがなにか?」
女将の切実な表情に私が心配になって聞き返すと
「お相手は、女子大生のお客様ですか?」
真顔の女将が切羽詰まった口調で迫ってきた。
「ああっ、真由だ」
女将がヤキモチを焼いていると勘違いした私は、応えながらそっぽを向いた。

「先生、明日一緒にお参りに参りましょう…、お願いですから、それまではどうか清らかにお過ごしくださいね」
固い表情のまま立ち上がった女将は、着物に袖を通しながら私に念を押していた。
「…、では明日の朝、お迎えに参ります、くれぐれも軽はずみなことはなさらないようにお願いします…、失礼します」
シュルシュルと慣れた手際で着付けを終わらせた女将は、美しい着物姿を見せて丁寧にお辞儀すると部屋を出て行った。

一人部屋に残された私は、なんだかよくわからずにコーヒーをすすっていた。浅い角度で差し込んでくる夕焼けが目に沁みた。

「先生…、来ちゃった」
ソファでいつの間にか寝入っていた私の顔をのぞき込むメガネッ娘女子大生の真由が、照れたような笑みを浮かべていた。窓の外はすで日が落ちて真っ暗になっていた。
「あ、ああ…、真由か…」
上体をかがめて私の口に触れそうなほど顔を近づける真由は、朝とは違うキャミドレスでたわわな胸元のくっきりした谷間を私に見せつけていた。

「…もう、大丈夫?、真由、心配したんだから…」
私の下半身に寄りかかった真由は、股間をなでながら上目遣いの色っぽい目で私を見上げていた。
「ああ…、心配させたな」
太ももに押しつけられたはち切れそうな乳房の柔らかさに、たちまち息子は元気になっていた。口角を上げてカワイイ笑みを浮かべた真由は、めがねの奥の大きな目に淫靡な色を漂わせていた。

温泉旅館 (45) につづく
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