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== 女子校生由貴 ==

女子校生由貴 (44) 痴漢男の結末

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女子校生由貴 目次

女子校生由貴 (44) 痴漢男の結末

陽一にとってやっと長い時間が終わろうとしていた。

タダシの怒りのこもった視線に観念して陽一は心なしか猫背になっていた。このことが公になって会社をクビになるくらいなら、お金で解決したって上出来ぐらいに考えていた。
やっとついたよ、…。
電車が駅のホームに滑り込んだ。降りる客とともに陽一も押し出された。

「うっ…」
腕を引かれた陽一はがっちりとつかまれている腕の先を見て絶望した。やはりさっきの少年が思い詰めた顔でにらんでいる。
「…」
騒ぎになることを恐れた陽一は引っ張られるままにホームのハシに向かった。

乗客の乗り降りが終わって、電車は走り出した。

下車した客でしばらく混雑していたホームもほとんど人影が無くなった。
「おいっ」
とタダシは出来るだけ虚勢を張って声をかけていた。にらんだままでケータイ画面を向けている。そこには由貴のパンティの中をまさぐる陽一の手が写っていた。陽一はもう逃げられないと思った。

「…」
タダシが由貴に耳打ちした。このときタダシは由貴に男のカバンから身分証明書を探せと指示した。
「…」
由貴は陽一のカバンを取り上げるとカバンの中を探し始めた。陽一は覚悟を決めて少年がせめて示談を言い出してくれるコトを願っていた。
「…」
陽一の腕をつかんだタダシは男をじっとにらみつけていた。

由貴はカバンから社員証と免許証を取り出した。
「へえ」
陽一の会社はタダシでも知っている有名企業だった。タダシは自分でもおどろくほど落ち着いて声をかけた。
「ずいぶんイイ会社にお勤めですね。おたくのような大企業だと、電車の中で女子高生をチカンすることが認められているんですか?」
タダシは自分でも皮肉っぽいことを言っているな、と思ったが顔はまじめぶっていた。陽一は痴漢という言葉に一瞬反応したがあとは黙ってうなだれている。

…うわあ、カッコイイ、…。
年上のお兄さんに対して堂々としたタダシの男前な態度に、由貴はすっかり見惚れていた。しかしでもなんで由貴にはあんな乱暴な態度をとるのかなあ、とちょっと不満だった。

「これは立派な犯罪ですよ。会社にバレたら、クビ間違いないですね」
顔を下に向けた陽一に静かに言うと、もう一度ケータイの画面を見せた。

「…」
由貴はタダシのケータイに写っているモノを知らなかった。もし知ったら顔を真っ赤にしてタダシの顔が見られなかっただろう。由貴は昨日タダシにとられた恥ずかしい写真のこともすっかり忘れていた。

うかつにも陽一は写真に自分の顔が写っていないこと確認しなかった。ハナからお金で解決しようと気持ちの上で負けていたので、言い逃れしようという考えはなかった。

なにより痴漢常習者を自覚する陽一は警察に突き出されることが恐ろしかった。コトが公になったら間違いなく会社をクビになると思いこんでいたので、穏便に済ませる選択肢しか考えられなかった。
「わかったよ、いくら欲しいんだ」
と絞り出すようにつぶやいた。

しめたっ、…。
タダシは心の中で勝利を確信して欣喜雀躍した。電車の中でシミュレーションした通りの展開だった。しかしタダシは落ち着いてゆっくりと男を追いつめていた。

免許で名前を確認して、
「陽一さん、落ち着いてください」
と苦々しい表情を浮かべる陽一の顔を見つめた。

「ボクも前途有望な陽一さんを追いつめることはしたくない」
「しかしあなたは、まだ高校生の彼女を痴漢という卑劣な行為で辱めた」
「ボクも彼女にされたことを考えると、タダで済ませるわけにはいかない」

タダシは陽一をまっすぐに見つめてイッキに言いきった。タダシの視線から逃げるように横を向く陽一は返す言葉がなかった。

由貴はタダシの堂々とした態度を横で黙ってながめながら、うっとりしていた。

女子校生由貴 (45) につづく
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