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交渉人涼子 10話 (3)

裏ろま中男 作品リスト
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交渉人涼子 Negotiator Ryoko
10話 山田刑事刺傷事件 (3)

脇腹を血まみれにした山田を前に産婦人科の堺医師はおろおろするばかりだった。女性のアソコは毎日見ていても、瀕死の患者を実際に目の前にするのは初めてだった。けたたましい音を立ててストレッチャーを押した看護師が駆け付けて、涼子は山田のグッタリしたカラダをゆっくりと横にした。堺医師は構内PHSで外科に手の空いた医師がいないか、しどろもどろで電話している。ストレッチャーを押した看護師が名前は言えますか、と意識のない山田に声をかけると涼子が、山田巡査、警視庁の刑事です、暴漢に刺されました、血液型はO型です、とストレッチャーのあとを追いながら答えた。

山田が救急治療室(ER)に運ばれると看護師が忙しそうに血圧や脈拍を計り、心電図の機器をはだけた山田の胸にはり付けるのを涼子はただ立ちつくして見ていた。処置台に横たわる山田の顔が白く浮き上がって見えて、涼子は足が震えている自分に気づいた。山田っ…、わずかに胸を上下させる以外微動だにしない山田に、涼子は声にならない呼びかけをしていた。そして声に出しそうになるのをぐっと唇をかみしめて堪えていた。いま何か言ったら、その場に崩れ落ちてしまいそうな気がした。

おろおろするばかりの堺医師だったが、やっと外科の医師が駆けつけて山田の様態を看護師に確認していた。この医師は堺よりずっと頼りになるらしく、テキパキと看護師に指示するとすぐに緊急オペを開始した。酸素マスクや点滴のチューブで物々しく飾られてほとんど動かない山田は、作り物の人形のようでとても血の通った人間には見えなかった。目の前の出来事に現実感がなくて意識が遠くなりそうな涼子は、しっかりしろっ、と頬をビンタして自らを叱りつけるとERから駆けだして病院の外に出た。

豊満な谷間に差し込んだケータイを取り出すと捜査一課特別班に連絡を入れた。呼び出し音が鳴る間、夜風が鼓動で高鳴るあふれそうな乳房の肌を冷ましていた。当直の笹野が出ると開口一番、山田は大丈夫かと、と聞いた。今オペ中です、課長は、涼子が答えると、今、代わる、と課長につないだ。涼子か、課長の声がした。はい、山田が、刺されました、涼子の沈んだ声に、うん、被害者の女性から連絡があった、所轄が現場に着いているはずだ、容態はどうなんだ、自慢話ばかりしているオヤジだと思っていた課長のしっかりした声に涼子は少し心強い気がした。

交渉人涼子 10話 (4) につづく
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