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== 交渉人涼子 ==

交渉人涼子 10話 (2)

裏ろま中男 作品リスト
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交渉人涼子 Negotiator Ryoko
10話 山田刑事刺傷事件 (2)

山田を見送った涼子は、バスタオルをまいただけの色っぽい姿で熱いコーヒーをすすっていた。ぼんやりと山田のコトを考えていると、いつの間にかコーヒーが冷めていた。コーヒーを入れ直そうと立ち上がった時にケータイが鳴って、床にカップを落としてしまった。山田とふたりで飲んだペアのカップだった。床に散らばる破片を忌々しそうに見た涼子が、ケータイを耳に当てると山田の声がした。暴行犯を捕まえたらしいが場所を言う前に声が途絶えた。

山田っ、不安になった涼子が呼びかけたが返事はなく、ざまあみろ、という誰かの声がする。山田っ、涼子の切ない叫びにやはり返事はなく遠くに女性の泣き声がする。時計を見ると山田が帰って20分も経っていない。涼子はケータイを首にはさんだままバスタオルをとると、なまめかしい裸体をレザーのつなぎに押し込んでガレージに走った。ケータイを切らずに胸のたわわな谷間に差し込むとブーツを履くのももどかしく、YZF-6Rのスイッチを入れた。アクセルをひねると甲高い咆哮がガレージを満たした。

ガレージを駆け出た涼子は、駅の途中の道に違いないと見当をつけて走ると、すぐに人だかりの駐車場が目に入った。急ブレーキでYZF-6Rから飛び降りた涼子は人波をかき分けて血だまりに倒れ込む山田を見つけて、山田っ、と駆け寄った。問いかけに返事はないが呼吸はしているようだ。しかし脇腹からの出血が激しい。だれかハンカチかタオルを、涼子の叫びに野次馬の中からハンカチが差し出された。出血部位を押さえたハンカチがみるみる赤く染まっていった。

救急車は?!、涼子が顔を上げて人波に叫んだが、要領を得ないので衣服を乱した被害者と思われる女性に、警視庁捜査一課特別班に、山田巡査が刺されたと連絡しろっ、と叫び、それを貸してください、と横に立っている男のベルトを外した。男は股間に顔を寄せる美貌の女性に息子を元気にふくらませていたが、涼子はかまわずに傷口を押さえたハンカチの上からベルトで強く縛った。意識のない山田を抱えるとYZF-6Rに乗せた。自分のヘルメットをかぶせると周りを見渡して巨漢の男に、あなたのベルトを貸してしてください、と叫んだ。

150センチはありそうなベルトでふたりのカラダを固定した涼子は、さらに山田の手をお腹の前で合わせて手錠をした。凶暴な咆哮をあげたYZF-6Rはすぐに野次馬の視界から消えた。YZF-6Rのシルバーの車体が置き石のような車の間をすり抜けて、気が狂ったようなスピードで駆け抜ける。ノーヘルの涼子を襲う激しい風圧は目を開けていられないほどだが、顔をしかめながら必死の形相で前をにらんでいた。美しい黒髪が風圧に押さえられて背中にへばりついていたがわずかに風になびいていた。風圧に耐えてかろうじて開けた目のハシからはポロポロと涙があふれていた。その涙が風圧によるものか、感情があふれ出たモノかは涼子にしかわからない。

黄色から赤に変わった交差点に飛び込んだ涼子は、青に変わって走り出そうとする交差方向の車からクラクションを浴びながら右折した。一般車両を蹴散らして走るYZF-6Rはカンジダの治療で通った総合病院についた。タクシーで帰ったときと逆の道をたどっていたが、4分の1以下の時間で到着していた。涼子は山田を背負ったまま救急口に駆け込むと、刺されて出血多量だ、早く止血してくれ、と警備員に叫んだ。呼ばれた当直医はかつて涼子にイヤラシイ診察をした淫乱医師だったが、山田を抱えた涼子は、お願いします、助けてください、と頭を下げた。

交渉人涼子 10話 (3) につづく
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