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== アベンジャー由紀 ==

アベンジャー由紀 (14)続く不幸

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アベンジャー由紀 目次

アベンジャー由紀 (14)続く不幸

「好きだ、おまえが好きなんだ」
由紀にのしかかった少年が、オニのような形相で迫ってくる。

「や…」
少年のカラダ全体で抑え込まれた由紀はどうしようもなく、ただ迫ってくる少年から顔を背けて目尻から涙をこぼす。
「好きなんだよおっ」
逆光で陰になった険しい顔が押しつけられ、由紀の唇を強引に奪った。由紀は無表情に乱暴なだけのキスを受けていた。

「なんだよ、このっ、不感症女っ」
いつの間にか少年の肉茎に貫かれて、感覚がほとんどなくなった膣に挿入されていた。脱力した女体にのしかかって狂ったように腰を振る少年が、口汚く由紀を罵る。
「バカにしやがって、死ね、死ね、死ねえっ、うっ…」
由紀の首を思いっきり締めながら少年は罵る。目の前がだんだん暗くなった。少年は急にのけぞると由紀の中にドクドクと発射していた。

「もう…、死ぬしかない…」
その声に暗闇から引き戻された由紀が振り向くと、枝にぶら下げたロープに少年が首を突っ込んでいた。
「や、やめてっ、やだあっ」
由紀の叫びもむなしく、少年の脱力したカラダがロープにぶら下がり、静かに揺れていた。


「や、やあっ、やだあっ」
突然悲鳴を上げた由紀は、ベッドから起き上がり大声で泣きわめく。
「由紀、由紀っ、大丈夫よ、大丈夫だから」
悲しい泣き声を上げる由紀を、母の淑子が抱きしめて懸命になだめる。

あの少年の自殺を聞いてから、由紀は悪夢に悩まされ続けていた。

少しウトウトするとあの少年が現れて、あのときと同じ状況が繰り返される。そしてみずからの悲鳴で目を覚ました。

ろくに眠れない少女の体は徐々に衰弱していった。点滴につながれてベッドに横たわるやせた由紀の姿は、元気だった頃の明るい少女の片鱗など一切無く、ただ痛々しいだけだった。


そして一向に改善を見せない娘の病状は、それ以上に淑子の心と体もむしばんでいった。

ヘッドに寝ているだけの由紀に対して、淑子はつきっきりで看病しながら、夫の面倒を見て家事もしなければならない。

由紀の短い睡眠時間に合わせてウトウトするぐらいしか寝る時間のない淑子の疲労は、とっくに限界を超えていた。

あの事件から一月経った頃には、誰が見ても淑子の過労はあきらかだった。優しい母親の面影は見る影もなく、看病疲れで悲惨なほどやせ細っていた。

夫の安弘が疲れ切った淑子をなんとかしなければと考えていた矢先に、悲劇は起こった。

家事を済ませて急いで病院に向かう淑子は、交通事故に遭った。

淑子はただちに由紀と同じ病院に運び込まれ、適切な処置を受けた。しかし衰弱した体は長時間の手術に耐えきれず、医師たちの懸命の救命措置もむなしく絶命した。

病床の娘を置いていかなければならない無念の涙を一筋こぼした淑子が、最期につぶやいた言葉は
「由紀…、ごめんね…」
だった。

アベンジャー由紀 (15)につづく
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