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アベンジャー由紀 (6)あの事件

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アベンジャー由紀 目次

アベンジャー由紀 (6)あの事件

九州某県に生まれた由紀の夢は、あの忌まわしい事件に襲われるまでアイドルになることだった。物心着いた頃からテレビで見るアイドルのモノマネをして歌っていた。

メガネをかけていた小学校の頃は、当時人気絶頂だったアイドルグループに憧れ、立派な女アイドルヲタクになっていたが、カワイイ娘にしたいと切望した親の愛情のおかげで、近眼治療に成功し、卒業までにメガネ無しで普通に生活できるようになった。

メガネが必要なくなった彼女は笑うと愛嬌のあるかわいい女の子だったが、時々遠くを見るような大人びた表情を見せることもあった。

中学に上がる頃には、アイドルグループの映像素材を収集して歌やダンスを完コピするだけでなく、アイドルらしい所作を研究し、普段の振る舞いとして自分のモノにしていた。それが時折見せる大人びた表情と合わせて、ドキッとするような女の艶を漂わせることさえあった。

ただそんな彼女を知るのはごく近しいヲタ仲間だけで、学校では目立たない存在だった。

中学を卒業する年に新しくできるアイドルグループのオーディションのウワサを知ったが、母に相談できずに応募を断念し、高校受験に専念することにした。

高校入試を突破した由紀だったが、しかしアイドルの夢をあきらめきれず無為に高校生活を送っていた。そしてアイドルグループの3度目のオーディションがあると知って、応募を決意したその矢先にあの事件が起こった。


市街地からはずれた新興住宅地の自宅から高校へは自転車で通っていたが、途中に人家のまばらな山道を通る。自転車通学にはちょうどいいくらいの道のりだったが、そんな人気(ひとけ)のない場所で由紀は襲われた。

新緑のまばゆい山間(やまあい)の道を、由紀は自転車を走らせていた。
「ねえ、道、教えて欲しいんだけど」
車があまり通らない、森林浴気分で気持ちのいい場所だった。3人の男が乗った車が帰宅する由紀の自転車の横に並走した。
「はい?」
高校生になって美少女としての片鱗を見せ始めた由紀だったが、イナカのウブな少女は男たちの卑劣な性欲のターゲットに選ばれたとは思いもせず、その声に自転車を停めた。

「…に行きたいんだけど…」
紳士的に声をかける男のほか、車内には薄ら笑いを浮かべる二人がいて、紺ミニスカからすらっと伸びたニーハイのナマ脚がペダルにかかっているのを、いやらしい目で盗み見ていた。
「だったら、この道を真っ直ぐ行けば…」
男が差し出す地図をのぞき込んで、中学から伸ばしはじめたロングヘアを女らしい仕草で押さえた由紀を、車から降りた男たちが襲いかかった。

「えっ」
二人の男につかまった由紀は、何が起こったのか理解する間もなく、車に連れ込まれた。自転車は林に投げ込まれ、車はわき道に入っていった。
「なにするんですか?」
男たちの目的が成長途中の自分のカラダだとは思いもしない由紀は、不気味な笑いを浮かべる男たちに怯えた声を漏らす。

「いいから、楽しもうぜ」
セーラー服の控えめなふくらみの柔らかさを、手の平で感じていやらしい笑いを浮かべる男は、怯える美少女に倒錯した異常性欲を昂ぶらせていた。

アベンジャー由紀 (7)につづく
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