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== 文庫本の彼女 ==

文庫本の彼女 (13)帰り道

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文庫本の彼女 (13)帰り道

「はあ…」
名前…、聞いとくんだった…。
遅刻した水沢は後輩である課長のイヤミなお小言を聞き流しながら、彼女の連絡先どころか名前さえも聞かなかったことを後悔して、落ち込んでいた。

そんな様子に同情したのか、後輩課長も早々にお小言を切り上げて水沢を解放した。

その日の水沢は全く仕事が手につかず、いつも以上にミスをした。そんな時、いつもなら苦虫を噛み潰したような渋い顔を見せるのだが、知的美女のとろけそうな女体を妄想するエロボケ中年は、終始だらしないニヤけ顔を晒して、周囲の人間を不気味がらせた。

はあ…、彼女に会いたい…。
遅刻したにもかかわらず、いつものように定時あがりした水沢は、やはり彼女のことを考えていた。
もう、一回…、
彼女の理知的な横顔が目に焼き付いて離れない。初めての恋にとらまえられた少年のようにうつろな目をした中年は
やりてえっ…。
魅惑的な女体の感触を思い出して、駅に向かう往来でも、恥さらしにも股間を膨らませていた。

「はあ…」
風俗でも、行くか…、
収まりの付かない股間に、風俗で抜くコトを考えた水沢だったが、
えっ…、
駅のホームに彼女を見つけて色めき立った。
いた…。
知的な雰囲気をまとってホームに立つ彼女は、やはり文庫本を読んでいた。

いい年をしてモジモジするオッサンが、声をかけあぐねているうちに電車が来た。
はあ…、
つり革につかまって文庫本に目を落とす彼女から、やや離れた位置に立ったオッサンは
やっぱり…、
成熟したカラダに張り付いたニットワンピに浮き上がる、くびれからお尻に続く艶めかしい曲線にいやらしい視線を絡めながら、
いい女だ…。
好きな女の子を遠くから見守るガキのように、声をかけられずにいた。

こっち…、
あわよくば気付いてくれるかもしれないと、時折劣情の混じった熱い視線を知性的な横顔に投げかけるが、
見ろ…。
癒し系の落ち着いた雰囲気を漂わせる彼女が、文庫本から目を離すことはなかった。

結局彼女は水沢に視線を向けることはなく、電車から降りた。

同じ駅だったのか…。
その駅は偶然にも水沢がいつも乗り降りする駅だった。その偶然を運命のように感じたオッサンは、
はあ…、いいケツ…、
朝と同じ短めのジャケットからのぞく、くびれからヒップラインに続くフェミニンな曲線が、
触りてえ…。
左右に揺れるのを眺め、すれ違う通行人に気味悪がられながら、ゆるんだスケベ面を晒していた。

ウチといっしょか?…、どこ、行くんだ?…。
彼女の歩く方向は水沢の帰宅経路と同じだった。偶然に偶然が重なってますますのぼせ上がったエロボケ中年は、にわかストーカーになっていた。

しばらく歩くと彼女はコンビニに入った。そこは水沢もよく利用するコンビニだった。彼女の背中を見ながら、コンビニに入った水沢はぎこちない歩調で雑誌コーナーに向かった。
何、買うんだ?…
いつバレるか、ドキドキヒヤヒヤするオッサンは雑誌に顔を隠すようにして、彼女の気配に神経を尖らせてた。

「アンタ…、懲り…、こっち…」
棚を一つ隔てた彼女の様子をうかがっていた水沢の耳に、若い男のささやくような声が聞こえた。
なんだ?…。
戸惑いがちに頭を傾けて横目で様子をうかがっていると、彼女がアルバイトらしい店員に連れて行かれた。

えっ、なに?…、
若い男にお尻を押された彼女はドアの向こうに消えた。突然彼女が連れ去れて、オッサンは狼狽した。
なに、やってんだ…。
バックヤードはジュースの棚の向こうにあった。ジュース棚に不自然に寄りかかったオッサンは、棚の向こうの暗がりでシルエットになった彼女と、
「お仕置…、し…や…」
軽薄そうな笑いを浮かべて白い歯を見せるアルバイトの様子をうかがっていた。

文庫本の彼女 (14)につづく
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