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== 交渉人涼子 ==

交渉人涼子 5話 (16)

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交渉人涼子 Negotiator Ryoko
5話 新課長着任、愛の嵐 (16)

山田はラーメンをすすりながら、子供のように泣いた。あふれる涙が口に入ってその塩からさにまた涙が出た。そして悲しみが怒りに変わって沢村を殺してやろうとカッとなったが、すぐに大それたその考えを打ち消して自分の無力さにうちひしがれた。その夜は悔しくて眠れなかった。

翌朝、焦燥した顔の山田は出勤してきた涼子に声をかけて二人きりになると、沢村について自分が見たことを話し、その非道さを訴えた。涼子は昨日のことを山田に見られてしまったうかつさを後悔したが、目の前で大きな体を振るわせて泣きながら、悔しさを訴える山田にうれしくなって抱きしめてやりたかった。しかしそれを顔に出さないように山田をたしなめた。

山田、おまえの気持ちはうれしい、しかしおまえがもし法に触れることをしたら…、警察にいられないようなことをしたら、私の相棒がいなくなる、くれぐれも自重して欲し…い、涼子は感情を出さないように言ったつもりだったが、後半声がかすれて目が潤んでいた。普段滅多に顔色を変えない涼子が見せた感情の高ぶりを目の当たりにした山田は、悲しみに満ちた涼子の心の内に触れた気がして、ガマンしきれずに床に突っ伏して大声で泣き出した。昨日ほとんど寝てない山田はあふれ出る感情を抑えることが出来なかった。涼子は山田が泣き崩れる前に立って山田が泣きやむのを見守っていた。

涼子は山田が泣き疲れて静かになった頃合をはかって、山田、立て、と短く言った。山田はよろよろと立ち上がったが、その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。涼子は、いい大人がみっともない、涙を拭け、と優しい表情でハンカチを渡した。その顔を見た山田は、さらに泣き出したが、ハイ、と応えて受け取ったハンカチを握りしめた腕を目に当てて、あふれる涙を懸命に抑えようと直立していた。そんな山田がいとおしくてうれしくて、涼子も泣き出しそうだった。

このとき涼子は山田に愛情に近い感情を持っていることを意識したが、あくまでも上司と部下の関係を続けようと決意した。そして山田がいつか一人前になって、彼にふさわしい女性と結ばれたときは祝福してやろうと、恋人というより母親のように考えようと自分に言い聞かせた。目の前でいつまでも泣きやまない山田に、すー、と涼子はたわわな胸を突き出すように深く静かに息を吸い込むと、泣くな、男だろ、と怒鳴りつけた。優しい態度から一転急に叱られた山田は、毅然とした涼子の顔を眺めながら、はい、と頼りなく応えた。

おまえの悔しさはよく分かった、私だってこのまま済まそうとは思ってない、この件は私に預けてくれ、という涼子の男前(?)な態度に圧倒された山田はただ、はい、と応えるのが精一杯だったが、一番辛いのは涼子なのだ、と想いいたると自分の取り乱した態度を恥じた。今私が一番心配しているのは、おまえが軽はずみな行動をして、おまえを失うことだ、と自分のことを考えてくれる涼子に、山田はまた泣き出した。私が指示するまで、絶対に動くな、と言われて、はい、と泣きながら何度も頭を下げてうなずいた。

交渉人涼子 5話 おわり
交渉人涼子 6話 (1) につづく
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