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== 千人斬りのチヒロ ==

千人斬りのチヒロ (14)お嬢様のおウチ

ろま中男3 作品リスト
千人斬りのチヒロ 目次

千人斬りのチヒロ (14)お嬢様のおウチ

「ああ、やだあ…、えっ、だれえっ、きゃあっ」
半ベソをかいた静流は茂みでゴソゴソする気配に目を向けて、晋二を発見するとそれまでのか細い声から想像も出来ない大声で悲鳴を上げた。

「ひっ…、へ?…、あっ」
きゃんっ…、なに?…、どうしたの?…、あ、あの、変態ヘタレ男…。
頭の上で響いた大声にビックリして顔を上げたチヒロは、静流の視線をたどって晋二を見つけると、小さくため息をついた。

「やだ、助けてえっ」
さっきまで消え入りそうな声で怯えていたいたいけな少女が、キャアキャアと黄色い悲鳴を上げる騒がしさにレズ気が消え失せたチヒロは、どうしたモノかと抱きついてくる静流の背中をさすっていた。

「あ…、警察ですか、○○公園ですけど、不審者が…、あ、そうです、痴漢です…、ええ…、捕まえに来て下さい」
あ~あ…、しょうがない…。
怯えて抱きつく静流にすっかりやる気のなくなったチヒロはケータイを取り出すと、110番してヘタレデバガメ男を官憲に通報してしまった。

なんだ…、続きしろよ…。
自分のことで騒ぎ出したとは思わずに不満そうに抱き合うふたりを見つめた晋二は、すぐに警官が駆けつけるとも知らずにデバガメを続けていた。

「あ、あそこだっ」
「え?…、なに、なんで」
数分後に駅前交番に詰めていたお巡りさんが駆けつけた。チヒロの的確な通報であっさり晋二を見つけて確保した。

チヒロも被害者として交番に連れて行かれたが、お巡りさんを見て安心した静流が泣き止まないので、取り調べは後日になってすぐに解放された。

「送ってくわ、おうちどこ?」
いつまでも泣き止まない静流に辟易していたチヒロは、それでも年長者としての義務感で声をかける。
「うっ、ひっ、あ、あそこ…」
嗚咽で肩を揺らす美少女はまるで幼女のように泣きじゃくっていたが、ゆっくりと手を上げてずいぶん立派な門構えの家を指さした。

「へ…、あ、そう…」
なに?…、こんな近くなの…。
手入れされた生け垣に目隠しされて家自体が見えないが、チヒロは泣き止まない静流の背中を押して車が行き交う道を横切った。
それにしても、ずいぶん立派ね…、きっと悪人か政治家だわ…。
公園と道を挟んで反対側にある大邸宅の門の前に立ったチヒロは、亀井と書かれた立派な表札を見て館の主人を勝手に妄想していた。

「ただいま、帰りました…」
やっと嗚咽の収まった静流が横にある通用門のインターホンに話しかける。
「じゃあ、これで…」
堅苦しいオジサンに説教されるのはまっぴらなので早々に退散しようとチヒロがきびすを返すと
「お願い、一緒に…」
静流がウルウルした目で見つめていた。

「…、はい」
はあ…、しょうがない…。
捨てられた子犬のような訴えかける目にじっと見つめられて観念したチヒロは、通用門の前で大邸宅の主(あるじ)が出てくるのを待った。

「お嬢様、お帰りなさいませ」
しかし出てきたのはお手伝いのオバサンのようだった。メイド喫茶で定番のお出迎えフレーズが全く似合わないヤケに上品ぶったそぶりのオバサンは
「そちら様は?」
チヒロをチラ見して、静流に聞く。
「お友達です…、危ないところを、助けてもらったの」
静流はいぶかしげなお手伝いに、しおらしい態度でデタラメを伝えていた。

「まあっ、なんてこと…、お嬢様、ケガは?…、お客様、どうぞ、お入り下さいませ」
やけに大げさに驚いたオバサンは静流のカラダを見回すと、慇懃無礼な態度でうやうやしく頭を下げてチヒロを招き入れた。

はあ…、本物のお嬢様だわ…。
門から本館までの白い小石が敷き詰められた、もったいぶった小径を歩きながら、暗くてよく見えなかったが日本庭園らしい立派な庭石や草木や池を眺めたチヒロは、コレまでの人生でつきあいのない人種との遭遇を、出来れば今からでもキャンセルしたいと重い溜息を漏らした。

千人斬りのチヒロ (15) につづく
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