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SBY16 (3)追跡

ろま中男3 作品リスト
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SBY16 (3)追跡

渋谷か、…。
ふたりの美少女との夢のような時間は、あえなく終わった。

ドアが開いて押し出されたオレの前を、小悪魔な笑みを浮かべた二人がチラ見して通り過ぎる。

二人を追って乗客が大挙降車すると思ってよけたが、オレたち以外に降りるモノはなく、そしらぬ顔をした乗客で混雑した電車はドアを閉じて発車した。

乗りかけた船だ、…。
なんだか不思議な気分で電車を見送ったオレは、若いフェロモンの混じった残り香に誘われるように、ニーハイソックスの美少女二人の後に付いていった。

あの下が…。
ニーハイの足が一歩前に出るたびに揺れるミニスカのその下は何もないと思うと、自然に股間が元気になって歩きにくい。

道元坂か…。
ハチ公前、109を通り過ぎた二人は上り坂をゆっくり歩いていく。

金曜夜の渋谷は、週末を楽しもうとする老若男女でごった返していたが、不思議なことに二人はまったく注目されることなく一般人のように歩いていた。

ホントは、違うのか?…。
あのグループの二人だと思ったのは勘違いで、実はナンチャッテなのかと疑いながら、後を付いていく。しかし美少女二人が歩く後ろ姿はセクシーで、オジサンのスケベ心を誘ってくる。

女子高生の聖地のように言われている渋谷だが、オレのような中年オヤジにとっては道玄坂のホテル街であり、ストリップ劇場「道頓堀劇場」だった。

二人は確実にそっち方面に向かっていた。

ストリッパーだったのか…、あれ…。
角で曲がった二人の先には「道頓堀劇場」の看板があった。てっきりそこに入るのかと思ったが、その手前の雑居ビルに二人の姿は消えた。

見失わないようにオレもそこに入ると、階段に揺れるミニスカのスソをのぞき込みながら後を追う。

二人はごく普通のスチールドアを開けて入っていった。そのドアの前に立つ。表札や看板らしいモノはなく、「SBY16」と書かれた小さなプレートが貼られているだけだ。

ええいっ、オニが出るか、蛇が出るか、だ…。
ココまで来て引き返すのもなんだかみっともない気がして、思い切ってドアを開けた。

「いらっしゃいませ、会員の方ですか?」
ドアの向こうには蝶ネクタイの男が立っていた。物腰の柔らかい老人で危なそうな手合いには見えない。

「違います」
会員制クラブか、なにかなのか、…。
入り口は黒いカーテンで仕切られて部屋の中は見えない。怪しい雰囲気プンプンだったが、オドオドするのもみっともないので、虚勢を張ってなるべく威厳があるように振る舞う。

「では、こちらに記入を…、会員登録の誓約書ですから、ご熟読ください」
老人はドアに隠れていた小さな机に座るように促す。机にはA4くらいの紙が置かれていた。

会員登録の誓約書には、住所、氏名、生年月日、職業などを書く欄があって、その下に「個人情報は誓約内容に違反しない限り、悪用することはありません」と書かれていた。

そして下半分が誓約書の内容になっていた。よくある内容だったが、最後の一行に「秘密厳守」と太字で書かれていて、「SBY16で見たこと知ったことを、SBY16以外の場所で口外した場合(ネットの書き込みなど情報漏洩すべてに関して)、会員は抹消される」と書かれている。

「あのコレは?」
会員資格が抹消されるという意味かと思ったが、こんな怪しい場所だけに一応確認してみる。
「その通りの意味です」
老人は優しい笑顔を浮かべて応えたが、その目は笑っていなかった。

鋭い眼光に背筋が冷たくなった。人を殺したことのある人間の目だと思った。

そしてSBY16は日本国の法律が通用しないアンダーグラウンドな何かで、口外した者は文字通り抹消されるのだと直感した。

ココまで来たんだ、毒を食らわば…、だ…。
逃げ出すことも考えたが、中年のつまらないプライドがそれを許さなかった。

「ありがとうございます、年会費20万と入場料5万になります」
誓約書に記入して渡すと、うやうやしくお辞儀した老人が料金を請求する。

「え…、カードで」
法外な料金に驚いたが、やせ我慢で平気ぶったオレはカードを差し出す。

さっきの電車以上に、楽しませてくれるんだろうな、…。
大枚をはたくのだから元を取ってやる、というケチ臭い気持ちで、オレは老人がカーテンを持ちあげて促す先に入っていった。

SBY16 (4) につづく
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