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女教師しほり (8)洗脳

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女教師しほり (8)洗脳

「…ううっ、…ほんとう、ですか」
しめたっ、…。
省吾は心の中で、勝ったと思った。賭に勝った、そう思った。しかしここでしくじってはいけない、と気を引き締めた。

「…、ほんとよ、何でもする…、だから許して」
しほりは省吾のあまり賢いとは言えないずさんな策略におろかにもはまっていた。子供の頃から夢で人生のすべてといってもいい教師をやめさせられるかもしれない、という絶望のふちにいたしほりは何をしてでも教師を続けたかった。省吾の言葉にわずかな希望を見いだしたしほりは、まさにワラにもすがる気持ちだった。

「…先生、スキです」
いいのか…、こんなにうまくいって…。
省吾はまっすぐにしほりの目を見つめた。
「えっ」
すき?…。
しほりは全く予想外の言葉に完全に思考が停止して、潤んだ大きな目で省吾のまじめな顔を見つめていた。

「前から先生が好きだったんです。だから先生もボクを好きになってください。好き同士なら、こういうことになってもおかしくないでしょ」
そうだ、しほりは、オレが好きなんだ…、オレにメロメロの、ツンデレだ…。
省吾は言いきった後、しほりを見つめた。ここが一番の勝負所だった。

「スキ…、なの?」
省吾君が、私を好きで、私が、省吾君を、好きになる…。
しほりは考えていた。年の差はあるが確かに好き同士なら、今の状況は愛し合うふたりがすることだった。省吾は自分を好きだと言っている。省吾を味方に出来ればクビを免れるかもしれない。

「…先生、ボクのことが好きだから、こんなコトしたんでしょ、…だったらうれしいよ」
よし…、いいぞ…、しほりめ、その気になってる…。
省吾は涙で濡れた顔に純朴そうな笑顔を浮かべた。
「省吾君を、私が、スキ?」
私は、省吾君を好きだったから…、こんなコトをしてしまったの?…。
さっきはスキになってくれと懇願した省吾は、こんどは自分自身が省吾を好きなのだと言いだした。しかししほりには言い換えに気付く心の余裕がなかった。今まで考えたこともなかったことだが、省吾が好きだと考えれば自分がケモノのような行動をしたことも正当化できる。

そうか、わたしは、彼が好きだったのね、…。
自分のしたことは性欲ではなく恋愛だった。先生と生徒という関係はひとまず置いておいて、それなら愛情のあふれる行為だ、恥じることはない。きっと深層心理で省吾を想っていて、今日突然行動に出てしまったのだ。そう思うと罪悪感が薄れてきた。

「はい…」
どうだ、オレを、スキだろ、…。
元来がヘタレであまり頭のできの良くない省吾は内心ビクビクしていたが、キョドっているのを顔に出さないようにして、しほりの次の言葉を待った。

「…そうよ、先生、省吾君がすきだったの、…でも先生と生徒だし、今まで言えなかったの」
そうよ、いつも省吾君に見つめられて…、省吾君の熱い視線を、私は意識してた…、そうよ、私は省吾君と、恋に落ちていたんだわ…。
どん底まで追いつめられたしほりは、自分にとって都合のいいでっち上げだとは思わずに、まるで自分に言い聞かすように、その言葉に強い意志を込めていた。

それに省吾は個性的な顔つきでよく見ればカワイイ。しほりは省吾の顔を見つめながら、この男の子が好きだと信じ込もうとした。

省吾のたくらみはずさんすぎて策略と言うにはお粗末だったが、洗脳の手順を一応踏襲していた。最初に心理的なショックを与えて絶望に追い込んでから、そのショックをかき消すような光明を見せて、逃げ道を与える。追い詰められて冷静に考える余裕のない洗脳被験者は、その逃げ道が洗脳のたくらみで用意されたとは考えず、自分の意志で選んだと信じ込む。

その逃げ道こそが省吾の狙いなのだか、子供の頃からのあこがれであった教師を辞めたくない一心のいしほりは、まんまと省吾の用意した逃げ道に飛び込んでいた。

女教師しほり (9) につづく
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