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魔法のメガネ (76)姉弟ゲンカ

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魔法のメガネ (76)姉弟ゲンカ

「成夫、何してんのっ」
振り上げた手を振り下ろすことも出来ずにオレが固まっていると、ネエちゃんの声がしてオレのケツを平手打ちした。

優子の時といい、ネエちゃんはノゾキしてるのか、ちょうどいいところで顔を出す。

「痛えっ、ネエちゃん、なにすんだよ」
ネエちゃん…、助かった…。
助け船を出してくれたネエちゃんに感謝しながら、オレは悪態をついていた。

「早く、ソレ、しまいなさい」
フルチンで怒鳴ったオレに、ネエちゃんは先っちょをはたく。

「イテエよっ、バカネエッ」
息子を叩かれて思わず腰を引いた情けない姿をさらしたオレは、慌ててズボンをはいていた。

「そのままでいいから、さやかさん、お茶でも飲みましょ」
母ちゃんのワンピの乱れを直して、申し訳なさそうに体を起こしたさやかは、ネエちゃんにうなずいて部屋を出て行った。

「バカはアンタよっ、女の子に手をあげるなんて、最低の男よっ」
さやかが出て行ったのを見届けたネエちゃんは振り返るのと同時に、グーパンチを見舞ってきた。

「うげ…」
オレはその一発でノックアウトされた。ネエちゃんの言う通りで、オレはぐうの音も出なかった。

「成夫君、出てるっ、鼻血っ」
落ち込んだオレがダイニングに行くと、さやかに紅茶を入れていた優子が、ビックリして駆け寄ってきた。

「何でもネエよ」
おかしな気分になって、それで恥ずかしいトコロを見られたネエちゃんにぶちのめされたオレは、優子に優しくされるとよけいにミジメだった。

「はい、ティッシュ」
それでも優子は丸めたティッシュを鼻に突っ込んでくる。ここで暴れたらよけいに恥ずかしいので、オレは黙って鼻にティッシュを詰められ、情けない顔をさらしていた。

「成夫君、紅茶、飲むでしょ」
オレがイスに座っても、優子はかいがいしく面倒を見ようとする。

オレがいじけた顔を上げると、さやかがこわばった笑顔を見せる。

成夫君、ゴメンネ…、私が、がまんすればよかったの…。

頭に紫と緑の点を見せるさやかの声が聞こえてきて、それがまたミジメにさせる。

「アンタ、さやかさんに今度ヘンなコトしたら、追い出すからね」
売れっ子学生モデルは、キレイな顔をこわばらせてにらんでいた。

「ああっ、わかった、オレが悪かったよ、さやか、許してくれっ」
「そんな、いいんです…、私、成夫君の奴隷ですから」
不機嫌そうに応えたオレに、さやかはネエちゃんとオレを申し訳なさそうに見ていた。

「いいっ、このウチで暴力を振るうようなヤツは、すぐに追い出すからね」
「ネエちゃん、オレを、殴っただろ」
「女の子のグーパンチは、暴力とは言わないの、愛のムチよ」
「だれが、女の子だっ、わけわかんねえこと言うな、暴力モデル」
「モデルは関係ないでしょ、あんたのおしめ、かえてやった恩を忘れたの」
「そんなの、しらねえよっ、バカネエッ」
「アンタ、また、喰らいたいようね…」
「わっ、やめろっ…、げっ…」

オレはネエちゃんと久しぶりに口ゲンカした。優子とさやかはあっけにとられてただ見ていた。結局またネエちゃんの愛のムチを喰らったオレは、みっともなく床にノビていた。

かわいそう、成夫君…、でも、私も、成夫君に、殴られたい、…。

髪を優しくなでられて目を開けると、頭にピンク色のでっかい点を見せる優子が、どMな妄想を浮かべて、微妙な笑顔を見せていた。

魔法のメガネ (77) につづく
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