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魔法のメガネ (66)ウチに帰る

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魔法のメガネ (66)ウチに帰る

「じゃあ、帰るか」
アブノーマルな場所でご奉仕を続けてもだえる奴隷女に、オレは素っ気なく言う。

「え…、帰るって?」
SMクラブに出勤途中だったどM変態女は不思議そうに聞く。頭の点はピンクに混じって濃い青色がたまに見える。

「オレのウチにきまってんだろ、ウチで飼ってやるよ」
東南アジア系が少し混じったエキゾチックな顔に、オレはご主人様気取りで応える。

調子に乗ったオレはさやかを自分の所有物扱いしていたのは確かだか、変態オヤジのいるウチに帰すなんて出来ないという気持ちが、きっとあったのだと思う。

「ウチ?…、どうして?…」
まだ理解出来ないさやかは、まばたきせずに大きな目でオレを見ていた。

さやか、この子に、飼われるの?…、なに?…、同棲?…、わかんない、…。

エッチな気分が治まったどM奴隷は、オレと同棲するのかと思ってドギマギしている。

「ちゃんと奴隷小屋作って、鎖でつないでやるからな、とりあえず服着ろ」
支配者気取りのオレはますます調子に乗って軽口を叩く。ダランとなった息子をしまったオレは、ほぼ全裸のさやかに服を切るように命令した。

「あ、はい…」
その言葉にほぼすっぽんぽんなのを思いだしたように、さやかはストラップボンテージなSM衣装を汗に濡れた素肌に食い込ませて、肉感的な女体を引き絞る。

「首輪にクサリはねえのか」
美少女奴隷をクサリで引き回す屈辱的な光景を妄想したオレは、また調子に乗って無い物ねだりをしていた。

「あの、これ、どうぞ…」
しかし首輪のチェーンはマゾ奴隷の必需品なのか、さやかは当然のようにバックの中からシルバーのチェーンをさしだした。

「お、付けてやる」
まさかそんなグッズを持ち歩いているとは思わなかったオレは、奴隷女がおずおずと差し出すチェーンにド○えもんのポケットを連想して、笑い出しそうだった。

吹き出しそうになるのを何とかこらえて先端のリングを首輪につなげてやる。

「ありがとうございます、ご主人様…」
チェーンでつながれたさやかはオレの所有物になった気分なのか、うやうやしく頭を下げてお礼の言葉を述べる。

さやか、この子の、専属奴隷に…、なっちゃったの?…。

頭を上げて上目遣いにオレを見つめるさやかの心の声が聞こえてくる。頭の点はなぜか緑色になっていた。

たしか緑って、優しい気持ちだよな、…。
あの夢に出てきた青色雪だるまの顔とともに、「やりまんめがね~」の説明を思いだしたオレは、さやかが優しい気持ちになってるのがよくわからなかった。

高校生のガキだったオレにはわからなかったが、ずっとあとになってマゾの本質は優しさだとわかった。

自分が傷ついても相手を喜ばせたいという気持ち、自分を犠牲にして相手のムチャな要求に応えるのは、究極の愛なのだ。

そんな優しい気持ちを持つさやかだから、父親の鬼畜な振る舞いを甘んじて受け入れてきたのだろう。

しかしガキだったオレは究極の愛を知っているさやかのやさしさに気付かずに、ただそれにつけ込んで図に乗っていた。

「じゃあ、帰るぞ」
心々の声でこの子呼ばわりされたことを思いだしてプチ癇癪を起こしたオレは、チェーンをイジわるく引っ張る。

「きゃんっ、あ、はい…」
チェーンに引かれてさやかはバランスを崩した。

ストラップボンテージ衣装が柔肌に食い込むカラダがぎこちなくたたらを踏んだが、危うそうなハイヒールの足は何とか転ばずにオレについてくる。

日が落ちて街灯もまばらな閑静な住宅街に人影はほとんど見られなかったが、たまに誰かとすれ違う時にはドキドキした。

ああっ、さやか、見られてる…、奴隷の私が、見られてる、…。

振り返るとお湿りを含んで重そうなロングヘアの頭にピンクの点を輝かせるさやかの、うわずった妖艶な声が聞こえてくる。

コイツ、露出狂も、あるんだな…。
マゾ奴隷の属性として露出狂の性癖を備えるさやかに、オレは満足げにニンマリしていた。

魔法のメガネ (67) につづく
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