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魔法のメガネ (20)優子の家

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魔法のメガネ (20)優子の家

「そろそろ、戻るぞ」
そろそろ午後の授業がはじまるので、そうつぶやくと優子は広げていた弁当をしまって忠犬のごとくついてくる。

「だけど、おまえ…、オレとベタベタしてて、いいのか?」
チューしたとはいえ、イジワルばかりしているのに妙になついてくる優子に、昨日までの毒舌女のイメージが払拭できないオレは、ついつぶやいていた。

「優子と一緒だと、イヤなの?」
頭に紫の点を見せて泣きそうな顔の優子がすがるように見上げてくる。

「だって…、おまえ、オレのコト、さんざんバカにしてたし…、成績のいい、頭のいいヤツとつきあったほうが、お似合いだぞ…」
普通の成績のオレは学年トップの優子に劣等感があったかもしれない。自分でも情けないことを言ってるのを意識して、自滅して陰々滅々としていた。

「う、うん…、そうだよね、優子、ひどいこと、言ってたよね…、ごめんね…、でも、成績いいのは…、勉強が好きだからじゃ、ないの…」
オレが落ち込んだ以上に、優子は肩を落としてしおれていた。頭の紫の点はほとんど黒に近くなっていた。

だって、成夫君…、優子のこと、ガリ勉女としか…、見てくれなかったから…、つい、イジワル、言っちゃって…、それに、いい成績取ってたのは、お小遣い、たくさんくれるから…、それで、アレ…、いっぱい、買ったんだよね…。

優子の心の声を聞いて知らずに立ち止まっていたオレは、やっぱり優子がツンデレだったことに安心して優越感を感じ、そんな自分を単純だと思いながら、気分をアゲていた。しかしそれが欲しくて勉強をがんばっていたという「アレ」がなんなのかは、よくわからなかった。

「ようするに、オレがまともに相手にしなかったから、スネてたわけだな」
支配者気分になって機嫌を直したオレは、優越感をにじませた笑いを浮かべていた。

「へ…、えへへっ、そうかもっ…、ゴメンネ、優子、素直じゃなかった…」
ほとんど裏付けのない安っぽい自信を復活させたオレに、頭の点を黄色にした優子もカワイイ笑顔を見せて腕に抱きついてきた。なんだか午前中より大きくなったような、セーラー服を突っ張らせる胸で腕を挟み込んでいた。

「あんまり、くっつくなよ…、誰かに見られたら、恥ずかしいだろ…」
腕を押してくる柔らかい弾力は気持ちよかったが、頭が良くてカワイイ優子がオレみたいなごく平均的な普通の生徒になついている様子を、同級生に見られるのは恥ずかしかった。

「あ、ゴメン…、気をつけるね…」
優子もオレの気持ちが薄々わかっているようで、慌てて離れると叱られた飼い犬のようにしおれてついてきた。

「学校終わったら、おまえのウチ、いくからな…」
落ち込む優子がちょっとかわいそうになったオレは、慰めるつもりで優子におねだりされて約束したことを確認していた。

「え…、うんっ、一緒に帰ろっ」
パッと表情を輝かせた優子は、また腕に抱きついてなついてきた。

「だから、それは、やめろ」
スタイルも良くて頭のいい、しかもツンデレ美少女にこんなになつかれて、うれしくないはずがない。オレはニヤけて緩みそうな顔を何とか保って、空威張りしていた。

「あ…、ごめ~ん」
オレの微妙な表情の変化をしっかり見ていた優子は、うれしそうなはにかんだような笑顔で腕を離した。

5時限目がはじまる前になんとか教室に戻ったオレは、午前中がんばりすぎたのとお腹が満たされたせいで、ほとんど授業を聞かないで寝ていた。寝ぼけて横に座る麻里をチラ見すると、さりげなくスカートをズリ上げてニーハイソックスの絶対領域を見せつけてきたが、オレは無視して寝ていた。

「駅、一緒だったんだ…、明日から一緒にガッコ、行こっ」
午後はほとんど寝て休養を充分取ったオレは、優子と帰りの電車に乗っていた。3時頃の電車は空いていて、オレは優子と並んで座っていた。最寄り駅が同じだと知った優子はうれしそうに、一緒に通学しようと誘ってくる。

オレは寝たフリをして聞こえないフリをしていた。ただ優子と一緒なのを見られたくないので、薄目を開けて同じ車両に同級生が乗ってないかだけは、チェックしていた。

「成夫君、起きて、着いたよ」
電車に揺られているウチにオレはホントに寝ていたらしい。優子に起こされると電車のドアはもう開いていた。なんとか乗り越さずに済んだが、アタフタした様子を優子に見られた気がしてバツが悪かった。

優子の家はオレの家と同じ方向だったが、駅から2分もかからなかった。駅前の30階以上もある高層マンションだった。

「ただいま」
「おかえりなさい…、あ、敦夫さん…、じゃない…、お友達?…、いらっしゃい」
最上階の数階手前でエレベーターを降りた優子が、門扉付きの玄関を開けるとお母さんが迎えに出てきた。オレを見て誰かと間違えた優子ママは、10年前の黒木瞳に似た、色気ムンムンの女盛りだった。

魔法のメガネ (21) につづく
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