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== 魔法のメガネ ==

魔法のメガネ (1)夢か真か

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魔法のメガネ (1)夢か真か

オレは世界を手に入れた。すべてがオレのモノになった。

オレは羽瀬川成夫、高校2年生だ。成績身長容姿性格その他諸々、ごく平均的な日本人少年だ。昨日まではどこにでもいる高校生として平凡に暮らしてきた。でも今朝からは違った。

はっきりとは憶えてないが、夢の中に自称ネコ型ロボットという二頭身の青い雪だるまに手足を付けたような、おかしなヤツが出てきた。

そいつが言うには未来から来てオレを助けるのが仕事だという。なんだかよくわからない話だったが、要するに未来の科学で何でもオレが欲しいモノを出してくれるという。

オレは多分その時、これが夢だと意識していたと思う。どうせ夢の話だし、そんないい話なら、っていうんでオレは女の気持ちがわかる道具が欲しいとねだった。

「やりまんめがね~」
そいつは素っ頓狂な声をあげると、お腹のポケットからなんの変哲もない黒縁のメガネを取りだした。メガネ君のオレが持ってるのと大して変わらないデザインだった。

自称ネコ型ロボットが言うには、このメガネはサカリの女を見分けることが出来て、その女に注目することで考えていることがわかるという。

ちゃんと使い方も教えてくれたそいつは、
「じゃあ、がんばってねえ」
やっぱり素っ頓狂な声でオレを励ますと、机の引き出しに戻っていった。

サカリって…、自分がネコ型ロボットだからって、バカにした話だ、…。
目を覚ましたオレはやっぱり夢だったと思った。しかし自分で見た夢なのを棚に上げて、オレはとぼけた二頭身雪ダルマにツッコミを入れていた。

ベッドから起きて大きく伸びをしてメガネをかけると、レンズの上スミに小さな青い点が見える。はずしてマジマジ見つめると、どうも昨日までのメガネとは違う気がした。ただ青い点は眼鏡を掛けないと見えない。

「おはよう」
学校に行く支度をしたオレは、キッチンでネエちゃんに挨拶した。

オレはネエちゃんと二人暮らし。母親はオレを生んですぐに死んだらしい。オヤジは単身赴任して地方でひとり暮らししてる。ネエちゃんは大学生。美人でスタイルもいいが、オレが小さいときからずっと母親代わりをしてくれている。

あれ、…。
レンズの上スミにあった青い点がネエちゃんの頭の上に見える。

「おはよ」
朝食の準備をしていたネエちゃんは、トーストをオレに差しだした。

あ~あ、今朝も、代わり映えしないヤツ…、どうしてこんな、つまんないヤツが、弟なんだろ、…。

「あ…、りがと…」
姉ちゃんの声が聞こえた気がして、オレはマジマジとネエちゃんと見つめていた。

なに?…、何みてんの、変なヤツ、…。

「どうかした?」
また姉ちゃんの声が聞こえた気がして、オレがビックリして見つめていていると、つまんなそうにネエちゃんがつぶやく。

「ネエちゃん…、今日、パンツ、何色?」
オレはまだ夢の続きなのかと思って、思わずまぬけなセリフをつぶやいていた。

はあ…、何言ってンの、このバカは…、でも、コイツ、こんなこと言うヤツだっけ?…、面白いかも…、今日のネエちゃんはねえ、カワイイ、ピンクよ…。

「何言ってンの…、さっさと食べて、ガッコ、行け」
ネエちゃんはあきれたような口調だったが、何となく笑ったような気がした。青い点がちょっと変化して、赤みがかったような気がする。

「カワイイ、ピンク…」
オレは聞こえたままをつい口走っていた。

え…、コイツ…、着替え、のぞいてた?…、まさか、私に、エッチなこと…。

「え…」
オレの不用意な一言に、ネエちゃんはあからさまに警戒した態度を見せた。両手を胸の前で組んで手の平でオッパイを隠すように押さえていた。青い点はさらに赤みがかかってきた。

「ち、ちがうっ、のぞいていないっ、行ってきますっ」
ネエちゃんに不審げに見つめられたオレは、朝飯にほとんど手を付けないまま、逃げ出すように家を飛び出していた。

魔法のメガネ (2) につづく
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