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鬼龍院サセ子探偵事務所 (8)ホゲモン

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鬼龍院サセ子探偵事務所 (8)ホゲモン

「あらら、しょうがないわね…」
痴漢オヤジに簡単に撃退されてしまったオレに、セーラー服がパッツンパッツンに張り詰めた胸の下で腕を組んだコスプレ美人はため息をついた。

「いでよっ、ホゲモーン」
勝ち誇ってニンマリ笑う痴漢オヤジをチラ見したサセ子サンは、ガチャガチャより二回りほど大きいカプセルを取り出すとオッサンふたりめがけて投げつけた。

「ウガー、ベッ、ガッ、ジューッ」
オッサンふたりの足下で割れたカプセルから、突然アメリカでも大人気の黄色いアレを三回りほど大きくしたマッチョなバケモノが現れて、分厚い胸板をボコボコ叩いてドラミングした。
「バリバリッ、グシャッ、ガリッ、ボリッ、ジュルルッ、ゴックン…」
痴漢オヤジふたりに襲いかかったバケモノはいとも簡単にさきイカのように引き裂いて手頃な大きさにするとバクバクとキレイに平らげた。扇情的ななんちゃってセーラー服美女に痴漢を働いたオッサンは跡形もなくバケモノの腹の中に始末されていた。

「やあんっ、里美君、こわかったあっ」
人間の言葉とは思えないよくわからないセリフを唱えて『アラジンと魔法のランプ』のようなカプセルにバケモノを収めたサセ子さんは、わざとらしく怯えてはち切れそうな胸を押しつけて抱きついてくる。
「あれは、一体何なんだ」
暑苦しい柔らかい膨らみに不機嫌な顔を作ったオレがUMAとしか言いようのないバケモノを問いただすと
「アキバのガチャガチャで当たったの、レアなのよ」
ニッコリ笑ったサセ子サンはバケモノを戻したカプセルを手の上に自慢気に乗せていた。

「んなわけっ、あるかっ」
「やあんっ、興奮しないでえ、興奮するならここに入れてから、ね…」
「わあっ、やめろっ」
全く説得力のない説明にオレがブチ切れると、困ったように笑ったサセ子サンは恥じらいながら紺ミニスカのスソをつまむ。彼女のノーパン主義を思いだしたオレは慌ててスカートを押さえた。

「オニイチャン、レアだよすごいね、陽菜も一匹欲しい」
バケモノに全く驚く様子のない陽菜がいつものわざとらしい馴れ馴れしさでなついてくる。お気楽に笑う陽菜の思いつきのセリフに、
「あら、いいわよ、でも陽菜ちゃんだったら、きっと飼い慣らすまえに食べられちゃうからお薦めしないけど」
落ち着いた笑みを浮かべて剣呑なセリフをつぶやいたサセ子サンがカプセルを差し出す。

「だあっ、そんな危険なモノッ、渡すなよっ」
陽菜が手を出す前にナイスバディ美女の手から危険物を取り上げると、
「いやんっ、でも里美君なら、いいわよ」
さっき見たのより小振りなカプセルには『エロSM高校生専用ローター』とマジックで書かれていた。

「こんなもん、いるかっ」
「あっ、だめっ」
「キシャー、ガアアッ」
サッパーン…。
余裕綽々な笑みを浮かべるセーラー服美女のタチに悪いおふざけにキレたオレがカプセルをホームに投げつけると、白煙と共にドラゴンのようなバケモノが出現した。バケモノは耳をつんざく咆哮を残して駅の横にある公園の池に逃げ込んだ。

「あんっ、あの子がナカで暴れる震動がステキだったのに…」
危険なバケモノを放し飼いにしてしまってもあいかわらず動じる様子のないサセ子サンは、それが逃げ出したことよりもローターの動力源が無くなったことにガッカリしていた。

鬼龍院サセ子探偵事務所 (9) につづく
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