2ntブログ

== 交渉人涼子2 ==

交渉人涼子2 7話 涼子の休日

ろま中男3 作品リスト
交渉人涼子2 目次

交渉人涼子2 7話 涼子の休日
(2)親バカ

「耕太さん、おはよう」
寝ぼけ眼でおりてきた山田に涼子が声をかけると、
「涼子さん、おはようございます」
バスローブ姿から漂う色気に昨日の夜を思い出したのか、いつものバカ面をさらしてうれしそうに笑っていた。

「耕太さん、見て、茉莉、パパよ」
茉莉を床に立たせた涼子が手を離すので、
「えっ…、あ、茉莉ちゃん…、こっちでちゅよ…」
慌てた山田は天使の笑みでよちよちと近寄ってくる愛娘にビックリして固まったが、すぐにひざまずいて大きく両手を広げ、
「おおっと…、茉莉ちゃん、立っちできるようになったんでちゅね」
嬉しそうな笑顔に倒れ込んでくる茉莉を受け止めると、高々と抱え上げて大喜びしていた。

「ビデオ、撮りましょう、お父さん、お母さん、ね」
愛らしい笑顔の茉莉の小さな手で鼻をイジられて喜色満面の山田が、記念すべき初立っちを記録しようと急かす。
「耕太さん、朝ご飯してからね、顔洗ってきて…、それにパジャマじゃ、恥ずかしいでしょ」
一人娘の成長を喜んでくれる山田に涼子は嬉しそうだったが、母の作ってくれたせっかくの朝食が冷めてしまうコトを言うと
「そうですね、すぐに顔洗ってきます」
大事そうに茉莉を涼子に渡した山田は、勇んで洗面所に向かった。

「茉莉ちゃん、おいちいでちゅか?…」
人肌に温め直したほ乳ビンをうれしそうに吸う茉莉に、バカ面を緩ませてニコニコ笑う山田は朝食をかき込んでいた。
「耕太さん、そんなに焦らなくても、茉莉は逃げないわよ」
頬にお弁当を付けた山田に、涼子はニッコリ笑ってキレイな指先でつまんで口に入れる。
「あ、えへへっ…、お母さん、おいしいです」
仕事だと厳しい上司だがプライベートは甲斐甲斐しい妻で、そんなツンデレっぽい涼子にデレデレした笑いを浮かべた山田は、優しい笑顔で見守る喜久恵に照れ隠しでお上手を言う。

「そう、たくさん食べてね」
お代わりのお茶碗を引き取る喜久恵は、快活な婿養子を本当の息子のように思っていた。
「耕太君は、たくさん食べるから気持ちがいいな」
元気な婿に2番目の孫を期待する泰造も、カラカラ笑った。
「はい、恐縮です」
リタイアしても大企業の部長クラスの威厳を漂わせる義父に、山田は頭が上がらない気がしていつも丁寧語で接していた。

「じゃあ、撮るわよ」
朝食をキレイに平らげて着替えた山田が、よちよち歩きの茉莉に付き添うのを、涼子はハンディカメラで撮影していた。
「涼子、撮ってやる」
泰造がビデオカメラを引き取って、一緒に写るように勧める。
「ありがと、お父さん」
よろよろと歩く茉莉に一喜一憂する山田と涼子を、泰造は慣れた手つきでカメラに収めた。きっとふたりが仕事に出ているとき、茉莉を撮りまくっているのだろう。

「やっぱり、茉莉はかわいいなあ」
初立っちの記念ビデオをさんざん撮りまくったあとは鑑賞会が始まった。テレビに大写しになる天使の笑顔に親バカぶりを発揮してデレデレする山田に、泰造は秘蔵するホントの初立っちビデオのことは黙っていた。

ふっふっ、私はキミの知らない茉莉を知ってる、…。
泰造は決して入り婿の山田を疎ましく想っているわけではないが、愛娘によく似た茉莉を自分の方がより愛していると密かに自負していた。

嬉しいハプニングで予定より遅れたが、涼子と山田は出掛ける準備をした。
「じゃあ、行ってきます」
ベビーカー兼用のベビーシートを後部座先にセットした320iのドライバーズシートに座った山田は、茉莉との別れをちょっと寂しそうに見送るオーナーの泰造に手を振ると、ガレージをゆっくりと出て行く。
「あれ?」
普段運転する覆面パトと同じ右ハンドルだがちょっと重めに感じて慎重にハンドルと切ると、見慣れたピンクヘルメットが近寄ってくるのを見た。

交渉人涼子2 7話(3) につづく
ブログランキング ケータイの方はこちらから
ブログランキングバナー1日1クリックご協力をよろしくお願いします。
関連記事
┗ Comment:0 ━ Trackback:0 ━ 11:20:49 ━ Page top ━…‥・

== Comment ==






        
 

== Trackback ==

http://aosaga9.blog.2nt.com/tb.php/1897-d739ebde
 
Prev « ┃ Top ┃ » Next