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== 交渉人涼子2 ==

交渉人涼子2 6話 中年自殺未遂事件(5)

ろま中男3 作品リスト
交渉人涼子2 目次

交渉人涼子2 6話 中年自殺未遂事件
(5)清水の決意

「おとうさん、誰なの、この人」
美人刑事を愛人と勘違いしたそそっかしい妻は、誤解を解こうと切実な表情に冷や汗を垂らす夫に迫る。

「そうよ、おとうさん、こんな破廉恥な女まで、はべらせて、恥ずかしくないのっ」
高校生の娘もコスキャバ嬢にしか見えない愛を疎ましそうに見て、自殺を覚悟した憐れな父を責めたてる。

「だから違うんだよ、お父さんは、死のうとしているだけで、浮気なんかしてない」
どうやら清水は家庭内で女2対男1の肩身の狭い思いをして虐げられているようだ。状況を理解してない妻と娘は言いたい放題で清水を責める。

「何が違うの、おとうさんが自殺しようとしてるって聞いて来たら、こんなホステスみたいな女と」
ホステス…、へえ…、私って、そんな風に見えるんだ…。
男性からの視線に慣れている涼子だが、ホステス扱いされたのははじめてで、とりあえず清水は今すぐ飛び降りる気配がないので、女性からの感想に新鮮な思いを抱いていた。

「そうよ、こんなの援助交際にしか見えないわよ、こんな頭の軽そうなコスプレ女に入れあげるなんて、最低よ」
そうね、あなたは正しい…、お父さんは、入れあげてないけどね…。
母娘(おやこ)の攻撃は一向に止む気配がない。涼子は嵐が過ぎ去るのをまってしばらく静観していた。

「あの…、愛は援助交際でもなければ、レイヤーでもありませんよ」
涼子に突き飛ばされた愛はひなたぼっこするようにのんきに寝そべって、グラビアアイドルのように超マイクロミニの脚線美を取り巻く警官たちにさらしていたが、娘の辛口なセリフは聞き捨てならないのか、訂正しようと声をかける。
「うるさいわねっ、変態コスプレ女は引っ込んでてよ」
「変態、コスプレ女?…、ひどいっ」
父親から愛に攻撃の矛先を変えて毒を吐く娘に圧倒されたミニスカポリスは、マジ泣きかウソ泣きかわからないが、また両手で顔を覆って泣き出した。

「あの…、オレたち3人とも警察官です」
見かねた山田が警察手帳を出して娘に声をかけると
「えっ、あっ、そうだったんですね、えへへっ…、お母さん、この人たち、警察の人だって」
「え、そうなの…、あらっ、そうですか、スイマセン、勘違いしちゃって、ほほっ」
長身イケ面刑事のアイドル顔は母娘の癇癪をあっさり納めた。ヒダミニスカのナマ太ももの間に両手を押し込んでシナを作るセーラー服美少女に、負けじと母も愛想笑いを浮かべる。

「奥さんですね、自殺をやめるように説得して下さい」
落ち着いてやっと話が出来ると判断した涼子は、清水に自殺を思いとどまるように母娘に依頼する。
「ほほっ、ホステスさんじゃなかったんですね…、お父さん、自殺なんてやめて…、世間体が悪いわ」
美人刑事に頼まれた妻はごまかし笑いしながら、夫のことより近所づきあいを気にしていると
「そうよ、自殺なんかされたら、私たちがイジメてたみたいでしょ」
娘もまた父の命よりも自分の都合しか考えてないセリフを漏らす。これでは清水が自殺を思いとどまるとはとても思えなかった。

「悪いけどとうさんは死ぬ…、ふたりとも幸せに生きてくれ」
転落しそうになった動揺が収まって母娘の勘違いも解けた清水は、ふたりのしょっぱい説得はいつものことなので気にしてないのか、翻意の無いことを告げる。

「だから、清水さん、なんで死ぬの?」
変態コスプレ女の汚名返上とばかりにミニスカポリスがくちばしを挟む。それは母娘が来る前にした質問だった。
「そうよ、なんで死ぬの?」
「きっと、お小遣いが少ないからスネてるのよ、おかあさん、もう少しお小遣い上げてあげれば?」
死を決意するほど追い詰められた夫の気持ちを、真面目に考えるつもりなど全くなさそうな妻が愛と同じように聞くと、娘は見当外れな理由を持ち出す。

「ちがう、おとうさん、リストラされたんだ…、だから、死ぬ…」
ようやく本題に戻ってどことなく安心したような中年は、自殺の理由をつぶやく。

「そんな勝手な理由ダメよ」
「そうよ、残された私たちはどうなるのよ」
沈鬱な表情でつぶやいた清水に、母娘は真剣な表情で反対する。

あら、結構まとも、…。
コレまで緊張感のない発言を繰り返してきた母娘とは思えない真面目な様子に、涼子が感心すると
「残された私たちの生活はどうなるの」
「そうよ、私、来年受験なのよ、今更就職希望になんか、恥ずかしくて変えられないわ」
へ?…、おとうさんは、どうでもいいの?…。
母娘が心配していたのはうやっぱり自分のことだった。

「大丈夫だ、生命保険がおりるから…、美里が大学出るまでの費用なら、心配しなくていい…」
父が死のうとしているのにカネのことしか考えてない家族に、そんなことはハナから想定内なのか、特段落胆した様子を見せない清水は諭すように娘に話しかける。

「そうなの、じゃあ、いいか」
「でも、自殺だと、生命保険おりないんじゃ?」
「え、じゃあダメよ、おとうさん、死んじゃダメ」
「そうよ、自動車事故なら、確実よ」
沈鬱な表情で今にも飛び降りそうな父の前で、コトここに及んでもやっぱりカネのことしか考えない母娘に、
「自殺で保険がおりないのは、契約後1年間だけだ」
寂しそうな笑みを見せると背中を向けて、屋上のヘリから下をのぞき込む。

「だめえっ、死んじゃあっ」
それまで黙って母娘の話を聞いていたミニスカポリスが急にしゃしゃり出て、ポロポロ泣きながら清水を引き留めようとする。
「婦警さん、ありがとう…、でも、私は死にます…」
家族よりもよほど心配してくれる愛に、清水はちょっと救われたような笑顔を見せると、飛び降りようとして自分の死に場所になるはるか下の道路をのぞき込んだ。

交渉人涼子2 6話(6) につづく
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