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== 交渉人涼子2 ==

交渉人涼子2 6話 中年自殺未遂事件(4)

ろま中男3 作品リスト
交渉人涼子2 目次

交渉人涼子2 6話 中年自殺未遂事件
(4)家族の訴え

「ねえ、オジサン、どうして死にたいの?」
涼子が考え込んだのを見て自分の出番とばかりに愛がすかさず問いかける。先着した刑事から自殺理由はリストラだと聞いていたはずだが、愛は不思議そうな無垢な笑顔で聞く。

「うるさいっ、あっちいけっ」
先ほど足を滑らせて落ちかけた自殺志願者の清水は、まだ足がガクガク震えるのを振り払うかのように、ブリッ娘する婦警をいまいましそうに怒鳴りつける。

「愛、あっちいかない…、だって、オジサンを死なせたくないから」
えっ…。
涼子は愛の横顔を見てギョッとした。愛が泣いていたからだ。
えええっ、…。
どんなに凶悪で残虐な犯罪者の前に出ても脳天気な笑顔を絶やさず、悲しみの感情とは無縁と思っていたお気楽婦警がポロポロ涙を流していたからだ。

「オジサン、ひっ、死んじゃダメ…、奥さんや、子供さんが、ひっく…、悲しむよ…」
コイツは…、まったく…、ホントにわからん…。
超マイクロミニのスソをギュッと握って引っ張る愛は顔を伏せてマジ泣きし始めた。この泣き声が演技だとしたらコイツは天才詐欺師になれると涼子は舌を巻いていた。

「え…」
それは清水も同じのようで、さっきまでニコニコしていたコスキャバまがいの婦警が悲痛な嗚咽を漏らしてか細い肩を揺らすのを、ただ見つめて固まっていた。

「そうですよ、うっ…、オジサンが死んだら、悲しむ人が、ひっ…、いっぱい、います…」
愛の悲しげな泣き声にもらい泣きした山田がイケ面顔にダラダラ涙を流し、真剣な表情で問いかける。

まさか、以心伝心?…、この娘だけは、ホントに、予測不能だわ、…。
泣き落としの方針を決めた涼子は、まだ山田にもそれを伝えていなかった。涼子の気持ちなど全く関知しないはずの愛が泣き落としをはじめたことが偶然なのか、あるいは自分の意図を読まれてなのか全く判断がつかなかった。

「ね…、オジサン、死なないで、お願い…」
うつむいた顔をゆっくり上げた愛は下まぶたに涙を一杯溜めたウルウルした目でを見つめる。
「う…」
清水は女の涙に弱かった。少女のように泣く幼げな愛が一人娘の顔とダブるのか、よろよろと歩み寄って網フェンスに指を食い込ませると、すすり泣く婦警を感極まったように見つめた。

「そうですよ、娘さんが、ううっ、悲しみますよっ」
根が単純な山田は愛の沈鬱な泣き声にすっかり影響されて本気で悲しくなっていた。ボロボロ泣きながら大声を上げて訴えた。

こりゃ、いけるかも、…。
愛と山田がタッグを組んだ泣き落とし作戦はかなり効いているようだ。愛が本気かどうかはともかく、アイドル顔刑事の本気の男泣きは自殺の決意をかなりぐらつかせているように見えた。

「ね…、死んじゃ、ダメ…」
「あ、ああ…」
「お願い、こっち、来て…」
「オレも、お願いします、自殺なんてやめましょう」
「ああ…、うん…」
演技か本気かよくわからないミニスカポリスの涙の訴えプラス山田の男泣きに、かすかに目を潤ませてうなずいた清水は、自殺を思いとどまったように見えた。

「こっち来てくれたら、愛の…、見せて上げるから…」
ひとり置き去りにされた幼女のように泣きじゃくる愛は、ギュッと握ったミニスカのスソをいきなり持ちあげた。
「ああ…、えっ…」
泣きながらうなずいていた男性は、まくり上げられたミニスカとピンクのパンティを見て表情を凍らせると
「バカにすんなっ、死んでやる」
泣きながら怒り出して、今にも飛び降りそうな勢いで屋上の縁に立った。

「ちょっと、まって…」
へっ…、バカっ…。
オトボケ婦警の予測不能な行動に焦った涼子がマヌケなポーズを続ける愛を押しのけ、自殺を留まらせようと声をかけるのと同時に
「おとうさんっ、なにしてるのっ」
「えっ」
後ろから声がして清水が振り返った。

「きゃああっ」
「いやああっ、おとうさあんっ」
いきなり振り返ってバランスを崩した清水は足を絡ませて転んだ。視界から中年男性の姿が消えたのと同時に、黄色い悲鳴と年季の入った叫び声が響く。

「あっ、ああっ…、死ぬかと思った…」
運良くこちら側に倒れた清水はビックリしたように目を見開き、網フェンスに指を食い込ませて起き上がると、放心してつぶやいた。
「…、はあああっ」
転落という最悪の事態を想定して成り行きを見守っていた刑事たちも、緊張から解放されて安堵の溜息を漏らす。

「おとうさんっ、なにしてるのっ?…、この人誰っ?」
モデル並みの美人刑事を一瞥した生活感のにじんだ中年女性は、命拾いしてまだ放心したままの清水をにらみつけて険しい表情で詰め寄ると
「やだ、おとうさんっ、いやらしいっ」
セーラー服少女も、突き倒されたままマイクロミニをはだけさせてナマ太ももをみせつけるミニスカポリスをチラ見して清水をなじる。

「まて、違う、おまえたちは、勘違いしてる」
放心した顔から血の気が引いて怯える表情を見せた清水が、シワの刻まれた額に汗を垂れ流して懸命に弁解していた。ふたりは清水の妻と娘だった。

とりあえず、助かった、…。
ある意味絶望的な状況に追い詰められた清水だが、とりあえず今すぐ自殺する危険はなくなったと涼子はホッと胸をなで下ろしていた。

交渉人涼子2 6話(5) につづく
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