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女子校生由貴 (182) 母の心配

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女子校生由貴 (182) 母の心配

「…ただいま」
タダシには逢えなかったが父のオサムと会った由貴は家に帰ると遠慮気味に声を掛けた。

「おかえりなさい…、こんな遅くに、どこ行ってたの?…、ごはん早く食べちゃいなさい」
急に飛び出していった娘を心配した八重子だったが、思ったより早く帰ってきて安心していた。
「うん、ゴメン…、お父さんは?」
八重子に言われてダイニングに入ろうとした由貴だったが、タダシに買ってもらったミニワンピを着ていることを思いだして子犬のように顔だけ出していた。
「…、お父さん、お風呂入ってるわよ…、どうしたの?、早くごはん食べちゃいなさい」
戸口で立ち止まった由貴に、不審そうな表情を浮かべた八重子だったが
「ちょっと、着替えてくるね…」
由貴はいそいそと自室に戻っていった。

「…いただきますっ」
部屋でミニワンピを脱いでロングTシャツを着た由貴は、すぐに階下に戻って食卓に着くと八重子のよそったお茶碗を受け取り、ごはんを食べ始めた。
「…、夜遊びはダメよ」
二人分のお弁当を持っていくようになった娘に彼氏ができたことに薄々気づいていた八重子は、釘を刺すように話しかけた。

「えっ、けほっ、んっ、んん…、夜遊びじゃないよっ、シャーペンの芯が無くなったから、買いに行ってたのっ」
図星を指された由貴は、思わず咳き込むととっさにデタラメを口走っていた。
「…ふうん、ならいいけど…」
娘のウソなどお見通しの八重子はすぐに帰ってきたのでそれ以上は追求しなかったが、表情はゆるめなかった。

「あっ、そうだ…、ケータイね、親の承諾書がいるのっ、だからあとで書いてね、あ、あとね同意書もっ」
八重子の不審げな顔をチラ見した由貴は、話の風向きを変える意味もあってケータイの話題を持ち出した。
「…あら、そうなの…、由貴が子供だから、店員さん不安だったんじゃないの」
ケータイを持っていない八重子は承諾書がどういうモノか分からなかったが、軽口を言って一生懸命の娘を茶化していた。

「ちがうよっ、未成年が契約するときは、誰でもいるの…、由貴、子供っぽくないモン…」
イジワルっぽさの混じった八重子の笑顔に、由貴はブー垂れてほっぺをふくらませていた。
「あら、そうなの…、でも、ケータイ買いに行くの、由貴一人で行ったんじゃないでしょ」
不機嫌そうな由貴のカワイイ顔に表情をゆるめた八重子は、きっと彼氏と一緒に行ったのだろうと想像すると、冷やかしのつもりで意味深に笑っていた。

「…、そうだよ…、優ちゃんていう、友達と一緒だよ」
八重子の意図が読めない由貴は、やっぱり子供扱いされてる気がして不機嫌そうな声で応えた。
「?…、ゆうちゃんていう男の子なの?…、なんだかカワイイ名前ね」
男の子なら由貴がもう少し照れてもいいような気がした八重子が不思議そうに聞くと
「あ、そういうことかっ…、優ちゃんは女の子だよっ」
八重子の笑いの意味がやっと分かった由貴は、残念でしたと言わんばかりに笑った。

「あら、そう、…まあ、いいわ、その承諾書渡しなさい、あとでお父さんに書いてもらうから…、おかわりは?」
なんだか期待はずれな気がした八重子は、空になったお茶碗を見て言った。
「…あ、ごちそうさまでした、おいしかった」
「いいえ、おそまつさま…」
すぐにでも席を立ちそうな由貴と、もう少し話がしたかった八重子はお茶を煎れた。

「…、ねえ、由貴…」
「?…、何、お母さん」
彼氏ができたの?と言い出せない八重子に、寄り目になって湯飲みを見つめながらフーフーする由貴が聞き返した。
「…、学校、楽しい?」
「…楽しいよ」
「…、新しいお友達、できた?」
「うん…、優ちゃん」
「…そう、よかったね」
「うん…」

熱そうに湯飲みに口を付ける由貴に、八重子が彼氏のことを聞き出そうと構えていると
「…あのねえ、おかあさん」
「なに?…」
由貴の方から口を開くと
「…さっきねえ、友達のお父さんにあったの」
オサムのことを話し出した。

「お友達って?…、ゆうちゃん?…」
「ちがうよ、近所のタダシ君のお父さん…」
八重子の意図を薄々感じた由貴は、タダシのことを口にして八重子の顔色をうかがった。
「…、そう、タダシ君て、誰?」
自分から聞きにくいことを由貴が言い出してくれて、八重子は思わず本音を漏らしていた。

「…タダシ君はクラスメイトだよ、優しい男の子だよ…」
最愛の人だと言いたい由貴だが、それは秘密なので当たり障りのないことを言って八重子の反応を見ていた。
「そう…、そのタダシ君は、由貴のボーイフレンドなの?」
いきなり本題を切り出した由貴に、八重子は気持ちが前のめりになってまた単刀直入に聞いていた。

「え…、えへへ…、ヒミツ…」
ボーイフレンドという響きにニンマリした由貴はごまかしたつもりだったが
「そう、…」
うれしそうな笑顔でバレバレだった。八重子は小さくため息をついた。

「…男の子とおつきあいするのはいいけど、節度を持ったおつきあいしなさいよ、お父さんには黙っておいてあげるから」
由貴をまだまだ子供だと思っている浩太朗には報告しないほうがいいと思った八重子は、釘を刺しておくことを忘れなかった。とりあえず近所に住むタダシという男の子だと分かっただけでも八重子には収穫だった。

「…、うん、だいじょうぶだから…」
心配する母に少し心が痛んだ由貴だったが、明るく笑って自室に戻っていった。

女子校生由貴 (183) につづく
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