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== 交渉人涼子2 ==

交渉人涼子2 5話 無差別殺傷事件(4)

ろま中男3 作品リスト
交渉人涼子2 目次

交渉人涼子2 5話 無差別殺傷事件
(4)ブリーフィング

「ご苦労様です」
涼子が敬礼で挨拶すると、現場指揮官はウワサの女刑事を二度見してから、答礼を返した。

恩田という名の中年警部は、凄惨な殺戮を引き起こした通り魔に怒りを禁じ得ないのか、あるいは本庁のお出ましに忸怩たる思いなのか、苦虫を噛み潰したような渋い顔だった。

「犯人はレンタカーで5名をはね飛ばし、車外に出て8名をナイフで刺傷させた」
「負傷者は治療中でまだ死亡者の報告は受けていないが、半数以上は重体だ」
恩田が現状を説明する。

「犯行を止めようとして飛びかかった青年に倒された犯人は青年を刺したが、倒れた犯人を取り押さえようとした一般市民やPBから駆けつけた警官の囲みをナイフで脅して突破すると、逃げ損なった女性を人質にとって、ショップに立て籠もった」
そこまで言うと恩田は悔しそうに唇を噛み締めた。

「勇気ある行動ですね」
犯人に飛びかかったという青年に、山田が感心してつぶやいた。愛も山田に同意してウンウンとうなずいていた。

「自分がケガしたら、元も子もないだろ、素人のヒーロー気取りは迷惑なんだよ」
警部は犯行を止めようとした行為を賞賛するより、ケガ人を増やしたことを苦々しく思っているようだ。

「そんなっ」
「山田、やめろ」
警部の態度に納得できない山田が食ってかかり、涼子が押しとどめる。

「…、青年は複数の刺し傷を受けて、出血多量で意識不明だ」
山田の厳しい視線から目をそらした警部は、あるいは青年の勇気を認めているのか、悔しさのこもった沈鬱な声で青年の状況を告げた。

「今は犯人逮捕が先決だ」
恩田の態度に市民を守る警察官としての矜持を感じた涼子は、まだ納得できずに不満そうな山田をたしなめた。
「はい…、すいません」
涼子の真剣な表情に口をつぐんだ山田は、警部に頭を下げた。

「人質を安全に確保して、犯人を生きたまま逮捕してくれ」
卑劣な犯人に怒りを感じ、逮捕の機会を譲る悔しさをにじませた声に
「必ず生きたまま逮捕して、法律の裁きを受けさせます」
涼子は警部の意を汲んで敬礼し、直立不動の姿勢で応えた。山田と愛も涼子にならって敬礼した。

「犯人は相当数のナイフを所持していると思われる」
「投げられたナイフで負傷したケースもある」
「接近の際はナイフの所在に常に注意しろ」
「拳銃の所持は確認してないが、警戒は怠るな」
「他人を簡単に傷つける人間は自分も簡単に傷つける」
「通り魔は一般に人生に絶望して破滅的な精神状況にある事が多い」
「犯人自殺という結末は絶対に避けろ」
「人質はか弱い女性だ、負傷者はもう出したくない、頼むぞ」
言い残した注意点を列挙した警部は、最後に本心を語って三人を見渡した。

再度敬礼した涼子は、防刃機能のある防弾チョッキを渡された。

ないよりマシか、…。
官給品の防刃性能はたかが知れているので、ジャケットを脱いだ涼子は気休めのつもりで防弾チョッキを着用した。
オシャレ、じゃない…。
愛は自慢のボディラインが防弾チョッキで隠れてしまうのが不満そうで、ウエスト部分のベルトを思いっきり絞っていた。

「いくぞ」
振り返った涼子は山田と愛を見つめて声をかける。山田はいざとなったら涼子の楯になるつもりで、涼子のすぐ後ろに控えた。

楯を構えた警官隊の囲みを通り過ぎて、犯人の籠もったショップに踏み入る。

「だれだっ」
商品棚が並んだ狭い店内を奥に進むと、甲高い男の声がした。神経質そうな印象だった。

「人質を開放して、投降しなさい、周りは警官隊が取り囲んでいる、あなたはもう逃げられない」
店の奥、キャッシャーの向こうに男女の姿を確認した涼子は、緊張した面持ちのふたりに目配せして、ゆっくりと接近していった。

交渉人涼子2 5話(5) につづく
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