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== 交渉人涼子2 ==

交渉人涼子2 4話 スーパー立て籠もり事件(4)

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交渉人涼子2 目次

交渉人涼子2 4話 スーパー立て籠もり事件
(4)幸せの黄色いハンカチ

「は?…」
何言ってんの?…、この娘は…。
立て籠もり現場の緊迫した雰囲気に不釣り合いなセリフを言う愛に、涼子はあきれたような不思議そうな顔を見せていた。

「涼子さん、『幸せの黄色いハンカチ』ですよ」
不可解な表情を見せる涼子に、愛はニコニコ笑って説明する。
「あ、涼子さん、こないだ一緒に見ましたよね、武田鉄矢、感動したなあっ」
ふたりで見たレンタルDVDの武田鉄矢と桃井かおりの濃厚なキスシーンを思いだした山田が、これまた緊張感のない声で応える。

「山田は、いいから…、どういうこと?…」
いまにもキスしそうに迫ってくる山田の顔を横に向かせた涼子は、まだ理解出来ずに愛に聞いた。
「あの映画で、健さんと倍賞千恵子さんの出会いのシーン、おぼえてます?」
涼子の興味が引けて嬉しそうな愛は、犯人のことなど無視して笑っていた。

「おっ、オマエら、何言ってんだっ、本当に殺すぞっ」
無視された犯人が激高し、片手に抱えた女性に柳包丁を突きつけて、オトボケ刑事たちに存在を主張する。
「いっ、やっ、死にたくないっ、お、おねがい、助けてえ…」
首筋に触れる魚臭い刃物に怯える人質女性が、涙混じりに悲痛な叫び声を上げる。

「落ち着け、おまえの要求は何だ」
興奮する犯人の血走った目をジッと見つめた涼子が、抑揚のない声で犯人の要求を引き出そうとする。

「うるさいっ、出て行けっ」
涼子の正攻法の交渉など、とりつく島もない犯人は大声を上げると、人質女性をギュッと引き寄せて、首筋に当てた包丁を押しつけて威嚇する。
「まて、落ち着け、早まるな」
今にも人質女性の首筋に突き刺さりそうな柳包丁に、涼子も思わず後ずさっていた。

「だから、好きな人にそんなことしちゃダメ」
代わって前に出た愛が、カワイイ顔に渋い表情を浮かべて、犯人にお説教じみたセリフを口走る。

「ちょっと」
愛の独断専行をとどめようとした涼子に
「オレわかった、高倉健はレジ係をしていた倍賞千恵子とはじめて出会うんだよね」
さっきの問いかけの答えがやっとわかった山田が、自慢気に言う。

あ、あれか、…。
涼子も『幸せの黄色いハンカチ』のあのシーンを思いだして、木訥な中年がレジ係の女性に想いを抱く様子を頭に浮かべた。

「そうですっ、この犯人はレジ係の女性に恋してしまったんですっ」
嬉しそうな山田にニッコリ笑った愛が、自信満々で犯人の心情を語る。

そんな、映画みたいなコトが…。
しかし公務中なのを思いだして気を引き締め、愛の突飛な説明を否定しつつ犯人を見ると
「うるさい、悪いかっ」
ニコニコ笑うミニスカポリスに心持ち頬を染めた犯人が怒鳴った。

へ…、図星なの…。
柳包丁を握った手を震わせて興奮しながら、照れた表情をかすかに見せる犯人に、涼子は拍子抜けしていた。
「あの…」
人質女性も涙に濡れた怯えた表情で、犯人の顔色をうかがっていた。

「ちゃんと、告白すればいいのよ」
ミニスカポリスが当然だと言わんばかりにニコニコと笑うと
「てコトは、犯人の要求は、『あなたが好きです』ってこと、ですか?」
立て籠もり犯が実は恋する青年だったとわかって表情を緩めた山田は、冷やかし気味にこみ上げる笑いをこらえていた。

「うっ、うるさいっ、そうだよっ、好きなんだよっ、悪いか」
お気楽ミニスカポリスに秘めた想いをバラされてしまった犯人は、愛の告白をヤケクソ気味に口走っていた。

交渉人涼子2 4話(5) につづく
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