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エロがきコナン (143)夕日のガンマン

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エロがきコナン (143)夕日のガンマン

バン…。
乾いた銃声がして大山の頭上を弾丸がかすめる。

極度の緊張で力んだ堀内の指はトリガーを引き絞り、平和な住宅街に発砲音が鳴り響いた。確実に始末書モノで、悪くしたら警察を辞めさせられるかもしれない軽はずみな暴挙だった。

「きゃあっ」
銃声を聞いてやっと拳銃を構える堀内に気付いたハルカが、シフォンチュニックのスソを懸命に押さえながら悲鳴を上げる。

「ひっ、ひいいっ…、く、くるなっ」
思わず引き金を引いて動転した堀内は固まってしまって、まだ両手で構えたニューナンブの銃口を大山に向けていた。

「ぬ…、貴様、ハルカ先生に当たったらどうするつもりだ」
目の前で発砲された筋肉バカは恐れるどころか逆上して、ハルカを守る騎士精神というより動物的本能で堀内に向かっていった。

「ワシがそんな豆鉄砲にビビるとでも思ったかっ」
ハルカを離した筋肉のかたまりは沈みゆく夕日を背に受けながら、震えながらニューナンブM60 3インチを構える堀内に迫っていく。

「うっ、よよよっ、寄るなっ…、うっ、ううっ、撃つぞ、来るなっ、バケモノッ」
思わず発砲してしまった堀内は完全にパニくっていた。名画ファンの堀内だが、この状況を『夕陽のガンマン』になぞらえる余裕など当然無かった。

順光で受ける夕日にまぶしそうに目を細めた堀内は、怒りのオーラをまとって迫ってくる筋肉のバケモノに失禁してズボンを濡らし、半ベソをかきながらわめいていた。

「この、痴れ者がっ」
覆い被さるような筋肉バカのカラダで夕日がさえぎられて、堀内のカラダが陰になる。

背後から受ける夕日の陰になって、目だけがギラギラするオニのような形相にますます恐ろしさが加わった大山の、ゴツゴツしたマッチョな腕が怯えた涙に濡れた目で見上げる堀内に振り下ろされる。

「ひっ」
同時にギュッと目をつぶった堀内の指に力が入って銃口が火を噴く。

ごん…。
バン…。
げんのうの様なゲンコツが制帽をかぶった頭を殴る音と発砲音が同時にした。

「ぐへっ」
「むぐ…、き、きさま…」
堀内の体はあっさり吹き飛ばされて道に転がった。胸板に38SPLをまともに食らった大山も、胸を押さえて二三歩あとずさり、尻もちをついた。

「ぐ…、なんじゃ、こりゃあっ」
盛り上がった筋肉でパッツンパッツンのトレシャツが鮮血で赤く染まる。

真っ赤に染まった手を呆然と眺めた大山は、タバコに火を付けようとして朦朧とする意識でポケットを探ったが、スポーツマンを自認する大山に喫煙の習慣はなかった。

松田優作のジーパン刑事のマネがしたかっただけである。しかし実弾を喰らった上でコントをする余裕があるとは、この筋肉のかたまりはタダ者ではなかった(ただやっぱりバカなのは間違いない)。

「きゃっ、きゃあああっ、だっ、だれかっ、助けてっ」
後ろでおそるおそる二人を見ていたハルカが、大山の血に染まった手を見て悲鳴を上げる。

「しっかりしろっ、苑子、救急車だっ」
警官と対峙する大山のただならぬ雰囲気に気付いて駆け寄ったがすでに遅かった。女の子座りで震えるハルカを抱きしめたオレは、苑子に救急車を呼ぶように指示する。

「う…、くう…、へっ…、…、やっ、やっちまった…」
脳震盪気味にフラフラ立ち上がった堀内は、胸を真っ赤に染めた大山を見てその場にへたり込む。

「もしもし、救急車っ、死にそうです、早くきてえっ」
年中頭の中が春の金持ち娘も、さすがこの状況には緊張した声でケータイに向かって叫んでいた。

「こ、コナン、くん…」
発砲事件を目の当たりにして、しかも撃たれた大山にショックを受けたハルカは、オレの腕の中で震えながら潤んだ目を向ける。

「心配すんなっ、このバケモノが一発の弾で、死ぬようなタマかっ」
怯えるハルカを何とか元気づけようと思わず大声を張り上げたオレだったが、しょうもないダジャレを口走ったことに気付いて、つい顔を緩めていた。

「う、うん…」
オレの照れ笑いを優しさと勘違いしたハルカはかすかに笑みを見せると、ギュッと抱きついてくる。

いつの間にか苑子のSPたちが現れて意識を無くした大山の応急処置をしていた。一人は苑子の安否を確認している。

オレは気付かなかったが堀内が拳銃を取りだした時点で、SPは緊急事態のレベル1体勢でオレたちを警護していたそうだ。

「ああっ、大丈夫だから、心配すんな」
テキパキと動く黒服の男たちに安堵の溜息を漏らしたオレは、ハルカを励ましながら、遠くからする救急車の音を聞いていた。

エロがきコナン (144)につづく
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