ろま中男3 作品リストろま中男劇場 目次3ろま中男劇場 7.オレは景子 (18)勝負の行方
「ふふっ、チョロかったね」
カワイイ顔に生意気な笑みを浮かべたサヤが、はしゃいでナマ足を跳ね上げてミニスカのスソを危うくしながら、スタンディングドットに向かう。
サヤと中村青年はほぼストライクかスペアで熾烈な争いを繰り広げていた。9フレームまで終わって二人とも200超えは確実だったが、サヤが若干リードしていた。生意気そうな小悪魔な笑みはサヤの勝利宣言だった。
ついでだがオレは100にはとうてい届かない散々なスコアだった。若い頃はまだマシなスコアが出せたのに、オッサンになったからか、あるいは北○景子のカラダが運チなのか、ともかくオレは落ち込んでいた。
「ああん、惜しいっ」
勢いよくアプローチしてブラックライト対応のドッド模様を恥じらいなく披露したサヤのボールは、ヘッドピンを見事に捉えたが残念ながら1本だけ残していた。
「でも、スペアとって、最後にストライク出してやるからね」
戻ってきたボールを丁寧拭くサヤは、中村青年に向かって気炎を吐く。どうやら賭のことは忘れて彼との勝負にのめり込んでいるようだ。
「いっけえっ、え…、やあんっ」
気合いの入ったかけ声とともに投げられたボールは、スミに一本だけ残ったピンにむかって勢いよく転がっていたが、横を素通りして虚しくピットに消えていった。
「残念だったな、サヤ」
しおれて帰ってきたサヤに声をかける中村青年の白い歯がキラリンと輝く。
「ガーターになっちゃえ」
スタンディングドットでボールを構える中村青年に、サヤの半ばヤケになった声がエール(?)を送る。
「サヤちゃん…」
ホッペを膨らませたサヤに、オレはまたオッサンの地をさらけ出して説教臭い声をかける。
「だって、負けたら…、や、なんでもない…」
いつものサヤなら北川○子なオレのオッサンぶりにツッコミを入れるところだが、勝負がかかったここ一番ではそんな余裕はないようだ。
なんだろ?…。
というスコアの勝ち負けは賭けとは関係ないはずなので、なんでサヤが言いよどむのかよくわからなかった。
「やったっ」
そんなオレたちのことなど眼中にない中村青年が放ったボールは、見事にピンを全部倒した。
「やんっ、もうっ」
次の一投があるのでまだスコアに出てないが、この時点で中村青年のスコアがサヤを上回っていた。サヤは悔しそうに中村青年の差しだした手をパチンと叩く。
「いてっ…、景子さん、やりました」
痛そうに手を振って片眼をしかめた中村青年が嬉しそうに手を上げる。
「はい…、次も、がんばってね…」
中身がオッサンのオレは恋する乙女のように胸のドキドキを意識して、うつむきがちにハイタッチした。
「次は奇数、狙うから、ね…」
恥じらうオレに顔を寄せた好青年が、耳元でささやく。
「あ、はい…」
サヤのスコアは208だった。中村青年が奇数のスコアなら賭が成立する。嬉しそうに口角を上げた唇をチラ見したオレは、中村青年とキスする自分を想像して、思わずティアードミニのスソを引っ張ってうつむいていた。
「…、おっ、やった」
真剣な表情でアプローチしてキレイな投球姿勢をみせた青年は、ボールの行方をジッと見つめていたが、狙い通り9ピン倒すと振り返って満面の笑みを見せる。
ホント?…、キス?…。
青年の最終スコアは219だった。オレの最終スコアが奇数なら中村青年とキスするコトになる。ちょっと自慢気に大マタで戻ってくる中村青年を、オレは上目遣いに見ていた。
「景子ちゃん、絶対偶数よ、そうだ、ガーターすればいいのよ」
たしかに…、その手があった、…。
オレのスコアは今72だった。サヤの言うように2回ともガーターにすれば、サヤとキスしなければならないが、中村青年にはキスしないで済む。男女のキスよりも女同士のキスの方が、おふざけとして済ませられるし、なにより今この好青年とキスしたら、自分がどうなるかわからなくて恐かった。
「そんなのダメだ、景子さん、真剣勝負ですよ」
ナイスアイデアについ安心した顔を見せてしまったらしく、中村青年が見とがめて真剣な顔で迫ってくる。
「え、ええっ、もちろん」
ああっ、ち、近い、…。
至近距離で迫ってくるイケ面にオレは思わず目を伏せて、逃げるようにスタンディングドットに立った。ボールを胸の前に構えたオレはドキドキがうるさいくらいに耳に響いて、無意識に汗で湿ったナマ足を不安げにすり合わせていた。
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