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ろま中男劇場 8.幽霊アパート (1)不幸な出会い

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ろま中男劇場 8.幽霊アパート (1)不幸な出会い

長沢雅美は今月大学を卒業式した。東京の中堅商社に就職が決まっていて、ひとり暮らしをはじめた22歳になったばかりのカワイイ女の子だ。

築40年家賃6万のアパートは若い女性が住むには多少防犯面で不安な気もするが、会社には電車1本で行けるし、そのレトロな雰囲気が故郷の町並みを彷彿とさせて、地方の田舎育ちの雅美は見るなり気に入って契約した。

引っ越しも済んで荷物の整理が終わった雅美は、窓の外に咲き始めた桜を眺めていた。新しくはじまるひとり暮らしに何となくウキウキして自然に顔が緩んでくる。若い娘らしい華やかな空気が古いアパートに漂っていた。

地方での大学生活ではそれなりに恋愛もして一通りの経験はしていたが、卒業時に特定の彼氏がいなかった雅美は、東京での新しい出会いにほのかな期待を抱いていた。

そして雅美はすでに出会っていた。しかしその出会いは雅美自身が知るところではなく、雅美の若い肉体を痴情地獄に突き落とすオカルトチックなものだった。


カワイイな…、好みだ、…。
にこやかに窓辺で佇む雅美を上から眺める視線があった。霊感のない雅美はその存在に全く気付いてないが彼はこのアパートに取り憑いた霊だった。アパートに不動産屋と来た雅美を一目見て、彼は恋に落ちてしまった。

この幽霊は生前、松本潤治という名の大学生だった。前世紀バブル景気がまだバブルと呼ばれてない頃、このアパートに住んでいた。

潤治はバブルに浮かれた東京の大学生らしくナンパな学生生活を過ごした。3年になってからつきあいはじめた女性は1年下で某有名女子大の学生で、当時のファッションを着こなしたオシャレな女の子だった。

潤治は彼女にベタ惚れで将来の伴侶にと思っていた。4年生になった潤治はバブルの恩恵を受けて就職活動でたいした苦労をすることもなく、それなりの会社に就職が決まった。バイトで貯めたお金で一流レストランを予約して、彼女に結婚の意思を伝えた。

彼女の答えはまだ遊びたいから結婚しない、だった。彼女はバブル期の典型的なタカピー女だった。二流大学に在籍して特に目立った所もない潤治とはハナから遊びのつもりだった。

丙午で受験生が大幅に減った年に大学受験してすんなり合格した潤治は、コレまでの人生で特に苦労することなく安穏と生きてきた。彼女にフラれたのが人生初の挫折だった。

彼女に拒絶された潤治はうちひしがれてアパートに帰ってきた。しばらくぼんやり座っていた彼は死のうと思いたつとためらうことなく首を吊ってしまった。意識が戻ったとき、彼のカラダはすでに火葬された後で潤治は霊魂として現世をさまようことになった。

それから約20年、潤治は幽霊としてこのアパートで様々な住人を見てきた。若い女性が入居してきたことが何度かあるが、幽霊になっても浮かれた性格の直らない潤治がふざけてオイタすると、気味悪がってすぐに引っ越してしまった。

このアパートにオカルトチックな因縁があることなど全く知らずに入居してしまった雅美には、スケベ根性を燃やした潤治の霊魂にエッチなイタズラをされる運命が待っていた。

ろま中男劇場 8.幽霊アパート (2)につづく
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