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真央 (62)不安

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真央 (62)不安

それから2週間ほど真央は普段通りに学生生活を続けた。

時折あのときの記憶が蘇ることがあるが、あれは自分じゃない、夢だ、と自らに言い聞かせて真央は意識して考えないようにした。あのときのことを考えると別の自分に変わってしまいそうで恐ろしかった。あの非日常の体験は夢だと思い込もうとした。

沢村から貰ったはずのケー番を書いたカードを探したがどこにも見あたらないし、沢村からも連絡はない。沢村に買って貰ったはずのブランド品だって影も形もない。

今までと同じ生活を続ける真央は、大学に行く途中に例の高層ビルを眺めても、自分から足を向けようとは思わなかった。真央の中ではあれは夢だったことがなかば事実になりかけていた。

「おいっ、すごいぞ、あれ」
「おまえ、いったのか、このドスケベ」
「いいんだよ、ロボットなんだから、その手のグッズと同じだよ」
「そうだよな、オレも行こうかな、話のネタになるしな」

前期試験が終わって夏休み直前の学食で遅い昼食を一人で食べていた真央の後ろで、そんな話し声がするのを、真央は聞くともなく聞いていた。

「おお、そうしろよ、強姦モードとか、もだえ方がすごいぞ」
「熱愛モードでも、乱れ方、スゴイらしいな」
「ケータイで申し込み出来るから、好きなモード頼んどけば、着いた頃にはセッティング終わってるぜ」
「痴漢モードって、電車みたいな部屋ですんのか?」
「らしぞ、でも集団レイプモードって、なんだよ、何人かでやんのかよっ」

強姦?…、痴漢?…、集団レイプ?…。
猥談して笑う男子学生の話で、真央は忘れようとしていた記憶がありありと蘇ってきた。息が荒くなって手が震える。なんだかはっきりしない不安で憂鬱な気分で落ち込んだ真央は、とにかく男子学生から離れたくて学食を出て行った。

「マオにしろよ、最新型ですごいぞ」
学食で立ち上がった真央の背中でそんなセリフが聞こえた。それを何度も呪文のように頭の中で繰り返した真央は、崩れ落ちそうな自分を支えてなんとか校門までたどり着いた。

あ…、あの車…。
校門の前の道を走り去った高級外車の赤い車体が真央の目に焼き付いた。フェラーリンF100は創業100周年の記念モデルで日本には数台しかないと言われていた。そしてそれは沢村の車と同じタイプだった。

それからどうやってたどり着いたか覚えてないが、真央はあの高層ビル地下駐車場のエレベータの前にいた。

おそるおそる指をだして指紋認証のセンサーに差し込むと、ピッと電子音がして扉が開く。不安で押しつぶされそうな真央は、後戻りしたい気持ちをかろうじて抑え込むと、震える足でエレベータに乗り込んだ。

真央 (63)につづく
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