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真央 (63)再会

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真央 (63)再会

高層ビルの高速エレベーターが低周波震動で真央のカラダを揺らす。そしてその震動に増幅されたように真央の心は揺れていた。

やっぱり、あれは、…。
夢だと自分に信じ込ませていたあの陵辱体験が事実かどうかはまだ半信半疑だったが、指紋認証があっさりパスしたことは、紛れもない事実として真央に重くのしかかっていた。

沢村のF100を校門の外で見かけてから、真央は何かに突き動かされるようにここまで来てしまった。明確な意識としてあったわけではないが、あの非日常の体験が本当に意味することを知りたいという想いが真央をここまで連れてきたのだろう。もう一度沢村に会いたいという気持ちが真央の心の奥に潜んでいることも、否定しきれなかった。

そして一番の目的は沢村の「好き」の言葉が本当だったのかということだが、それが意識に浮かび上がってくるのを女としての気持ちが懸命に抑え込んでいた。学食で聞いた男子学生の猥談から、沢村の愛の告白が自分を利用するための方便であることはおぼろげに理解出来たが、そのカラクリが理解出来てしまったからこそ、真央の深層心理はそれを考えないようにしていた。

不安とかすかな希望の入り交じった気持ちで、真央はじっとエレベーターの白いドアを見つめていた。エレベーターが最上階に到着し、軽い逆Gがかかってドアが開く。目の前に見覚えのあるシンプルな廊下が続いている。

今なら、まだ引き返せる、…。
冷酷な現実に対決する覚悟をまだ決めかねて迷っていたが、そんな気持ちとは関係なく真央のカラダはゆっくりと歩を進めていく。突き当たりにドアが見える。まだ覚悟を決めかねていた真央だったが、ドアに引き寄せられるように近寄っていった。

真央を拒むようにどうしようもなく重く見えたドアだったが、ノブに手を掛けるとあっさり開いた。廊下の明るさに比べて部屋の中は薄暗く、しばらく中の様子がわからなかった。

「やあ、来たね」
薄暗い部屋の奥から声がして真央は身をすくめた。まごうかたなき沢村の声だった。
「なにしてるの、おいでよ」
真央の不安などお構いなしなフランクな呼びかけに、真央のカラダは自然に前に出て部屋に入っていた。

ようやく薄暗さに目が慣れてきて真央は部屋の様子がわかってきた。はじめてここに来たときの状況と同じように簡素なベッドが部屋の隅に置いてあって、その横のイスに沢村は座っていた。

「久しぶりだね、会いたかったよ、真央ちゃん」
イスから立ち上がった沢村がにこやかに声をかけてくる。口調はくだけているが、なんだかはじめてここに来たときのように、真央は他人行儀な堅苦しさを感じた。

真央 (64)につづく
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