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お天気キャスター(5)AD木村

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お天気キャスター(5)AD木村

どおしよっかなあ~、…。
会議室を追い出された友里は、局をブラブラしていたが、
そうだ、スタジオ、見に行こう、…。
初レギュラーの晴れ舞台を見に行こうと決めて、『目覚まし君テレビ土曜日』のスタジオに向かうと、あまり早くない足をシャカシャカ一生懸命動かしていた。

「うわあっ、やっぱり、ひろいな…」
『目覚まし君テレビ』と兼用のスタジオは朝の生収録が終わってから数時間経っているので、かすかに物音がするだけでシンとしてずいぶん広く感じた。
「キミ、誰?」
友里の一人言を聞きとがめた青年が、いぶかしげに声をかける。

テレビ局には警備員がいて警備しているが、それをすり抜けた一般人の侵入者がたまにいるので下っ端のADがスタジオを見張っている。今年ADになったばかりの木村は、生放送が終わったあとも細々とした仕事を言いつけられて、スタジオに残っていた。

「ひにゃんっ…、あ、あの…、わたし、高見友里といいます…、こんど、このスタジオで…、お天気おねえさんに…」
ひいっ…、う、にゃあ…、だ、だ、誰?…、こわいよお…、で、でも…、ちゃんと、ご挨拶しなきゃ…。
いきなり声をかけられて、水をひっかけられた子猫のように飛び上がった友里は、バクバクする鼓動を意識しながら、上目遣いで長身の青年を見上げていた。

「あ、ああっ、キミか…、知ってるよ、オレもR大なんだ、ミスコンクイーンも見たよ、ウエディングドレス着てたよね、似合ってたよ」
ADとして当然新しいキャスティングは知らされていた木村は、大学の後輩でお天気キャスターに採用された友里に注目していた。ロリ気のある美人との対面を楽しみにしていた木村は、急に気安い態度に変わって優しい笑顔を見せた。

「やんっ、そうなんですかっ、でも、はずかしいな…」
よかったあっ、この人、先輩なんだ…、でも、あれ、見てたんだ、いやん、…。
大学の先輩とわかって不安や警戒心が吹っ飛んだ友里は、人なつっこい笑顔になって浮ついた声を漏らしたが、友人に勧められたウェディングドレスを着てミスコンの舞台に立つ自分を、知っているという先輩に少し恥じらってもいた。

「いやあっ、キレイだったよ、オレのお嫁さんになってよ」
カワイイ笑顔とロリ声に上機嫌のAD木村は、ウェディングドレスを着た友里を思い浮かべると、調子に乗って軽口を叩いていた。

「え…、お嫁さん…」
プロポーズ?…、されちゃった…、今日、初めて会った、ばかりなのに、…。
木村の冗談を真面目に受け取った友里は、ビックリしたような大きな目で木村の気安い笑顔を見つめていた。
「へ…、あの、冗談だよ…」
友里の真剣な視線にあっけにとられた木村は、呆れ顔になって友里を見おろしていた。

「じょ、冗談…、あ、あははっ、そうですよねっ、私ったら、恥ずかしい…」
へっ…、冗談って、ウソってこと…、そ、そうよね、いきなりあったばかりで…、ミスコンで、一目惚れされたなんて、ないよね…、はずかしいっ…。
浮かれた気分からいきなり突き放された暗い気分に落ち込んだ友里は、笑いの消えた固い表情で乾いた笑い声を上げていた。

「あ、ゴメン、でも、キミ、ホントにカワイイよ、そうだ、ちょっと来て」
つまらない冗談で輝くような笑顔を一気にしおれさせて申し訳なく思った木村は、罪滅ぼしの気持ちとともにかつて聞いた話を友里で試そうと、スタジオの奥の暗がりに連れて行った。

「え、なに?…、どこいくの?」
あうんっ、ひっぱられるうっ、はううっ…、でも、この人の手、がっちりしてる、…。
落ち込んだ気分に浸るヒマもなく引っ張られた友里は、木村の強いグリップに抗えずに引きずられていた。しかしスキンシップにてんで弱い友里は握られた手首が熱くてドキドキしながら、ズンズン歩いていく木村の横顔を恋する乙女の目で見つめていた。

お天気キャスター(6) につづく
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