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== 交渉人涼子2 ==

交渉人涼子2 2話(9)

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交渉人涼子2 2話 銀行(?)立て籠もり事件
(9) 夫婦マンザイ

まぬけすぎる、…。
愛が楽しそうに指摘したように、犯人の凶器は小学生が持っているようなプラスチックの三角定規だった。またまた気が抜けてヒザが落ちそうになった涼子は、なんとか女体を支えて大きなため息をついた。

「…あのオジサン、フォーク世代っぽいですもんね」
すっかりテンパって青くなっている虚弱中年を尻目に、愛がニコニコ笑っていると、
「それは、『青い三角定規』だろっ」
思わずツッコミを入れてしまった涼子は、ハッとなって愛に背を向けた。
「…、青い三角定規って、何ですか?」
仲良く掛け合いする二人に疎外感を感じた山田が、興味津々に首を突っ込んできた。

「…1971年にデビューした3人組のフォークグループでね、…って、そんなこと言ってる場合かっ」
にこやかに説明し始めた涼子は、いきなり山田に回し蹴りを食らわせて、そのガタイをなぎ倒した。愛に調子を狂わされっぱなしだった涼子は、うっぷん晴らしが出来てちょっとうれしそうだった。
「ずごーい、ノリツッコミですね」
本物のドツキ夫婦(めおと)マンザイに笑顔の愛はうれしそうに拍手までしていた。床に寝そべった山田も涼子の折檻にうれしそうに顔を輝かせていた。しかし綺麗な女刑事だと思っていた涼子の凶暴な面を目の当たりにした犯人は、完全にテンパって震え上がっていた。

「…お、おまえら、いい加減にしないと、この娘の、いっ、命が短いぞっ」
完全に舞い上がった犯人は、縮み上がった気持ちを奮い立たせるためか、はたまたこのバカ騒ぎに加わりたかったのか、急に声を荒げたが、
「…、ちゃんと言えてないぞ、しかも噛んでるし…」
山田を折檻したおかげでいつもの調子を取り戻した涼子は振り返って、ジットリした目でしれっと言いはなった。

「…なにおっ、ば、バカにするなっ」
薄くなった頭まで赤くした犯人は、口からツバを飛ばして言い返すと、三角定規を女子局員の首に押しつけた。犯人を押さえようと涼子がカウンターを軽く飛び越えると、山田も起きあがって後に続いた。

「…、まって、このひとかわいそうな人なんです」
涼子が三角定規を持った手をつかんでひねり上げようとすると、それまで黙っていた女子局員が涼子に迫った。
「へっ、…?」
意外なセリフに犯人の手を握った手を緩めると、女子局員は犯人をかばうように部屋のすみに押しやって、犯人の三角定規を持った手を自分の首に押しつけた。女子局員は足を広げ気味に女座りして制服のミニスカからナマ足を見せつけていた。

「…、ちょっと、落ち着いて、アナタは人質なのよ」
予想外の展開につかのま身動きできなかった涼子は、気を取り直して女子局員に声をかけた。胸の名札は竹内とあった。
「竹内さん、いい、アナタがそうやって犯人をかばうと、犯人隠避という立派な罪になるのよ」
「正確には刑法103条犯人蔵匿、犯人隠避罪ですね」
「アンタは、黙ってなさいっ」
「…、ごめんなさい」
竹内の常軌を逸した行動をいさめようした涼子に、ツッコミを入れた愛は大目玉を食らってシュンとなってへこんでいた。

「私のことはいいんですっ…、抜水さんはまじめ何十年も働いてきたのに、ずっと会社の人たちからイジメられて、その上他の人の失敗を押しつけられて、リストラされちゃったんですよっ」
床にへたり込んだ抜水をかばうように抱きついた竹内はまるで子猫を守る母猫のように、少女のような顔を精一杯怒らせて、涼子に強い意志のこもった視線を向けていた。
「…」
犯人をかばう人質など初めての涼子は、なかば呆れながらどうしていいか全く思い浮かばなかった。

交渉人涼子2 2話(10) につづく
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