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== 交渉人涼子2 ==

交渉人涼子2 2話(8)

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交渉人涼子2 目次

交渉人涼子2 2話 銀行(?)立て籠もり事件
(8) 鬼退治

愛の報告によると、郵便局に立て籠もった犯人はひとりで、押し入ってすぐに非常通報ボタンを鳴らされると、焦って若い女子局員を人質に取ったらしい。武器は鋭利な刃物らしいとしかわかっていない。他の局員は全員安全に避難した。

涼子が現場の責任者に挨拶すると、すぐにでも説得して欲しいと言われ、追い立てられるように涼子は、拡声器の交渉人が入るという声を背中に受けて郵便局の入り口に向かった。涼子に従う山田の後ろに愛も付いてきた。

「はあ…」
…、山田が犬なら愛はサルだわ、そうすると私はキジ抜きのまぬけな桃太郎、ってトコね、…。
ぞろぞろとついてくる二人にヤケ気味な連想を浮かべた涼子は、鬼退治を前にして色っぽい唇のハシにシニカルな笑いを浮かべて小さくため息をついた。

…、それにしても、なんだかひよわそうな、オニだわ、…。
犯人の様子をうかがった涼子は、女性でも簡単にひねり上げられそうな虚弱としか表現のしようのない頭の薄い中年オヤジに、やっぱり気抜けしてやる気をそがれたが
ダメよ、これは事件なのよ、…。
両手で頬を軽くビンタして気合いを入れ直した。

「…どうしたんですか、入らないんですか?」
入り口で立ち止まっていた涼子に、山田が声をかけると
「状況確認よ」
つかの間存在を忘れていた山田の声にドキッとした涼子は、表情引き締めて山田をにらみつけた。

「なるほど、犯人を観察して作戦を立てていたワケですね」
そこに愛が緊張感のないカワイイ笑顔で首を突っ込んできた。
「…、そうよ」
だから、なんでアンタ、そんなに短いのよ、…。
ココが繁華街なら風俗嬢にしか見えない愛のミニスカとすらっとしたナマ足に、ジットリした視線を向けた涼子に
「…、なんですか?」
ニコニコと笑顔で応える愛に、涼子は小さくため息をついた。

「…、行くわよっ」
なんだか調子が狂って緊張感が無くなりそうな涼子は、気合いを入れるつもりで二人にびしっと声をかけた。
「はい」
二人同時に返事したが、笑顔の愛はなんだかうれしそうだった。ATMの前を通って事務所の中に入ると
「…来るなっ、こっ、コイツを、殺すぞ」
本人はすごんでいるつもりらしいが、虚弱中年の迫力のない声がした。

「周りは警官隊で包囲されてる、すぐに投降しなさい」
涼子はカウンターの向こうで、若い女子局員に隠れるようにオドオドした視線を向ける犯人に声をかけた。
「…、ひっ、人質を、殺されたくなかったら、車と現金782万円を、用意しろ」
ずいぶん後退した額に汗をダラダラと流した犯人は、涼子の鋭い視線から目をそらし、うつむきそうな顔を懸命に上げて叫んだつもりのようだが、やっと聞き取れる蚊が鳴くような声だった。
「…ムダよ、逃げられないわよ」
ハンパな金額を、…。
切りの悪い金額を指定する虚弱中年に、しかしそのハンパな感じがキャラに合っている、となんとなく納得もした涼子は、犯人を刺激しないようにジリジリとカウンターに近づいた。

「…くっ、来るな、こっ、殺すぞっ」
精一杯虚勢を張っているが、男が震えているのはカウンター越しでもわかった。犯人が女子局員を脅している凶器が見えて、
「三角定規ですね、小学生みたい…、カワイイ」
愛の楽しそうな声がした。緊張感のない声にテンションを下げられた涼子は、顔を横に向けるとニコニコ笑う愛を切れ長の横目でにらんだ。

交渉人涼子2 2話(9) につづく
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