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== 交渉人涼子 ==

交渉人涼子 11話 (37)

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交渉人涼子 Negotiator Ryoko
11話 死なないで…、交渉人涼子よ永遠に (37)

山田が取りだしたのはリングケースだった。指輪…、それが指輪だとすぐにわかった涼子だったが、意表を突かれて素になってそれを見つめていた。安物で恥ずかしいんですけど、いちおう給料3ヶ月分です、山田が照れたように笑っていた。涼子が刺された時、涼子を失うことの空虚感を痛切に思い知った山田は、次の日コレを買ったが渡す勇気が出せなくてずっと隠し持っていた。でも涼子の妊娠を知った今がチャンスだと思った。もらってくれますか、ふたを開けて差し出す手に小さいけどキラキラ光る石がついた指輪がのっていた。

震える手で受け取った涼子がそれを見つめて、キレイね、と山田に笑顔を向けた。その目は潤んでいた。よかった…、うれしそうに山田が笑った。ケースから指輪を取りだした涼子は山田の手に渡すと、して、と恥ずかしそうに左手を差し出した。潤んだ目を伏せた涼子の美しい顔に一瞬見とれた山田は、興奮した鼻息を響かせると涼子の手を取って指輪を差し込んだ。左手の薬指に輝く指輪を見つめた涼子は、うれしそうに笑ってその拍子に目尻から涙をこぼした。幸せそうな涼子に感無量の山田は、綺麗な顔をつたう一粒の涙を、真珠のようだと見つめていた。

こんな情けないオレですけど…、だけど…、だからっ、涼子先輩がいないとダメなんですっ、結婚してくださいっ、涼子の手を優しく握って大きく息を吸った山田はイッキに言い終わると涼子の答えを待った。…私で、いいのね、山田の真剣な顔に涙があふれてかすかに肩を震わせながら目を伏せた涼子が聞くと、涼子先輩じゃないと、ダメなんですっ、山田が大声で叫んだ。声の大きさに涙が止まって、ビックリしたように大きく目を開いた涼子は、怒ったような山田の顔を見て、いいわ、と笑うと山田の胸に寄りかかり、結婚して…、あげる、とつぶやいた。

ホントですか、肩を抱いて涼子の顔をのぞき込んだうれしそうな山田に、うん、と涼子も笑った。ありがとうございます、山田はうれしくて涼子をぎゅっと抱きしめると、あっ、と叫んで、腕の力を緩めた。大丈夫だから…、涼子のカラダを心配する山田に、ニッコリ笑った涼子は背中に手を回して抱きついていた。山田の胸に顔を埋めて高鳴る鼓動を感じながら、うれしそうに笑っていた涼子は、ご飯、食べましょう、と顔を上げた。そうですね、と山田もうれしそうに笑った。

交渉人涼子 11話 (38) につづく
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== 交渉人涼子 ==

交渉人涼子 11話 (36)

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交渉人涼子 Negotiator Ryoko
11話 死なないで…、交渉人涼子よ永遠に (36)

家に帰りましょう、涼子を胸に抱いた山田が優しくささやくと、そうね、を涼子は涙に濡れた目で見上げて笑顔を向けた。そうだ、お祝いにおいしいものを食べましょう、なにか食べたいものありますか?、涼子の笑顔にうれしそうに笑った山田に、…、今日は家に帰りましょう、私が何か作るわ、と涼子が応えると、そうですね、…涼子先輩の手料理、楽しみだな、山田はウキウキして涼子の顔を見た。でも、準備してないし、あまり期待しないでね、以前から和食を作ると約束していたが手の込んだモノを作る時間が無いので、申し訳なさそうに涼子が言うと、涼子先輩の料理だったら、なんでもうれしいです、と山田は笑った。

涼子がナースステーションに挨拶すると、涼子の妊娠を聞いていたサエコが、退院おめでとうございます、幸せになってね、と優しい笑顔を見せた。でも、気が向いたら遊びに来てね、山田にイタズラっぽい笑顔を向けると、もう、来ません、サエコのイタズラに懲りていた山田はきっぱりと断った。山田の誠実な愛情を信じている涼子は、いいじゃない、産科には来るんだから、その時山田と一緒に顔出すわ、とサエコに笑った。そうよね、涼子の幸せそうな笑顔にサエコは笑って応えたが、もう山田にちょっかい出すのはやめよう、と自らに言い聞かせて一抹のさびしさを味わっていた。

タクシーを拾って帰路についた涼子は、材料買うから、…で止めて、とスーパーの名前を告げた。スーパーでカートを押す山田は、新婚みたいですね、とニヤけていた。そうね…、何食べたい、新婚という言葉にドキッとした涼子は照れたように笑って聞いた。そうですね、お祝いだからスキヤキがいいんだけど、暑いからなあ、と考え込む山田に、お祝いはスキヤキなの?、と涼子が笑った。え、ああっ、ウチではそうなんですよ、オヤジがどうも好きらしくて…、照れたように鼻をこする山田に、そうなんだ、と涼子はうれしそうだった。

そういうこと、これからいろいろ教えてね、涼子がはにかみながら言うと、そうですね、オレも涼子さんのご両親のこと知りたいし、…、そうだ、ご挨拶に行かないと、急にまじめな顔になった山田に、そうか、でも親は今、フランクフルトなの、しばらく帰らないと思うけど…、えっ、そうなんですか、困ったように考え込む山田に、まあ、そういう話は後で相談しましょう、とりあえず今は、夕食のメニューよ、と笑顔を向ける涼子に、そうですね…、そうだ、ブタしゃぶ食いたいですね、冷たいヤツ、と応えた。

うん、わかった、ニッコリ笑った涼子はテキパキと材料をカートに放り込んでいた。スーパーからタクシーを拾って久しぶりの家に帰った。山田は涼子の着替えを取りに何度か来ていたが、涼子は一ヶ月ぶりだった。ドアを開けるといつもと変わらない家に、涼子はほっと小さく息をついた。家の中はキレイで、山田は涼子が気持ちよく帰ってこられるように来るたびに掃除をしていたようだ。山田の優しさがうれしかった涼子が、山田、ありがとう、と言うとなんで感謝されるのかわかってない山田は曖昧に笑っていた。

てきとうに座って…、山田に座るように勧めると涼子はコーヒーサイフォンをセットして、腰にエプロンを巻いて料理をはじめた。キッチンに立つ涼子の後ろ姿を幸せそうに眺めていた山田に、はい、とコーヒーを出した涼子は、すぐ出来るから待ってて、とニッコリ笑った。初めてコーヒーをごちそうになったときのと違うが、テーブルに並ぶペアカップに山田はそれだけでまた幸せな気分に浸って顔をゆるめていた。しばらく待っていると涼子は冷しゃぶやスープをテーブルに並べて、ご飯、炊く時間なかったから、ごめんね、とレンジでチンしたパックのご飯をお茶碗によそった。涼子のかいがいしい新妻のような姿を見て感動に震える山田は急に思い出したように、コレ、もらってくれますか、とポケットから小さな包みを取りだした。

交渉人涼子 11話 (37) につづく
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交渉人涼子 11話 (35)

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11話 死なないで…、交渉人涼子よ永遠に (35)

妊娠するのを願って毎回ナカ出ししていた山田は、涼子の妊娠を心から喜んでいた。喜びのあまり勢い余って涼子をベッドに押し倒した山田のうれしそうな顔を見つめた涼子が、喜んでくれるの?、と涙で潤んだ目で不安そうに聞くと、当たり前ですよ、とはっきりと応えた。きっぱりした山田の態度に不安だった気持ちが晴れて、かすかに笑顔を見せた涼子はうれしくて半ば閉じた切れ長の目からポロポロと涙をこぼしていた。あっ、と叫んだ山田は涼子から離れた。…、急に逃げ出した山田にまた不安になった涼子だったが、どこか痛かったですか、と泣きだした涼子を心配していた。

涼子と赤ちゃんを気遣う山田に安心した涼子は、大丈夫、と泣き笑いの顔でつぶやいた。そうですか、ほっと息をついた山田も笑った。でも、7週目だとまだ不安定らしいから、と涼子が申し訳なさそうに言うと、そうか、しばらくエッチ出来ませんね、でも子供のためだし、しょうがないですよね…、男かな、涼子先輩みたいな美人の女の子だったら、いいですね、すっかり有頂天になって饒舌に喜びを口にする山田はバカ面をうれしそうにゆるませていた。…、でも、山田の喜びようにうれしくなった涼子だったが、気になっていることを黙っていられなかった。

何ですか…、小躍りして陽気に笑う山田が涼子の深刻な顔を見た。あなたの、赤ちゃんよ、涼子は真顔で山田を見つめた。…、当たり前ですよ、なんでわざわざそんなことを言うのかわからない山田だった。あなたも知ってるとおり、私は何度も犯人に…、汚されたわ…、涼子のつらそうな表情に山田は黙って聞いていた。こんなに喜んでくれる山田に水を差すようだが涼子は思っていることをきちんと伝えるのが誠意だと思った。…でも、この子は、あなたの子なの、お腹に手を当てた涼子は、山田ならきっと信じてくれる、と祈るような気持ちで山田を見つめた。しかし信じてくれなかったら、一人で産んで育てるしかない、と悲壮な覚悟を秘めていた。

オレの子供に決まってるじゃないですか、あんな犯罪者相手に、涼子先輩が妊娠するわけ無いですよ、ニッコリ笑った山田は自信満々で応えた。それに7週目ってことは、6週間ぐらい前だから、オレが初めて涼子さんの家に行った頃ですよね、あのときに出来たんだ、幸せ絶頂の笑顔に、信じてくれるの?、涼子は目を潤ませた。信じるも信じないもないですよ、元気な赤ちゃんを産んでくださいね、うれしそうに笑って顔を輝かせた山田が涼子の顔をのぞき込んだ。ありがとう…、そう言って笑顔を見せた涼子は、山田の男らしい態度に心から感謝して、うれしくてあふれる涙が止められずに抱きついたたくましい胸をいつまでも濡らしていた。

交渉人涼子 11話 (36) につづく
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