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文庫本の彼女 (30)訪問の真意

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文庫本の彼女 (30)訪問の真意

「で、なに?」
いったい、なんだ…。
カラフルなモモヒキにも見えるジャージ姿の水沢は、入り口の土間で戸惑うコギャルに声をかけた。

「やっ、あのっ、失礼、するっす」
上半身はだかで迫ってくるオッサンから目をそらし、恥じらいの表情を見せるコギャルは、大げさに頭を下げると、せわしげに靴を脱いで板の間に上がり込んできた。
「な、なんで…」
えっ…、
化粧が濃さで真っ赤になっているのはわからないが、頭を上げて上がり込むコギャルの、真っ赤に火照った耳を目の前に見たオッサンは、
何の用だ…。
脇をすり抜けるコギャルのカラダから漂う、柑橘系のコロンに鼻腔をくすぐられていた。

「突然、さーせん、あの…」
キッチンテーブルの前で心細げに立つコギャルは、コンビニでの泰然自若としたふてぶてしさは全くなかった。

コギャルの態度がコンビニにいたときとはあきらかに変わっている事に、オッサンはまるで気付いてなかった。彼女に夢中だったエロボケ中年は、あるいはコギャルのことなど眼中になかっただけかも知れない

「あ…」
まさか…、
マヌケ面でコギャルの私服姿をぼんやり眺めていたヘタレ中年は、ハタと気がつき、
あの痴漢行為を、訴えるって…。
夢遊病者のように妄想にまみれて、コギャルのお尻に股間をすりつけた行為を抗議しにきたのか、と内心戦々恐々としていた。

「とりあえず、座って、何か飲む?」
そうだ、ここは穏便に、だ…、
屈折したサラリーマン生活で、事なかれの性根がしみついていた水沢は、
そうだ、穏便に済ましてもらおう…。
顧客に手揉みするような情けない笑顔を見せると、コギャルに座るように勧めた。
「あっ、自分が…」
たとえ情けなくても笑顔を見せた水沢に、コギャルもちょっと安心したのか、手にしたビニール袋をテーブルに置いて、コンロにケトルをかけた。

「これ、使って、いいっすか?」
遠慮がちにキッチンの棚を開けたコギャルが、コーヒーを取り出す。
「あ、ああ…、悪いね」
けっこう、かわいいかも…、
背丈より上の棚につま先立ちになるコギャルの、チェックミニから伸びたナマ脚を見るとは無しに見ていたオッサンは、ついムラムラしてスケベな妄想を浮かべたが、
いや、そんなことより、なんで、来たんだ…。
突然の訪問の意図がわからずに、警戒心を強めていた。

「どうぞっ」
インスタントコーヒーを入れたカップにケトルのお湯を注いだコギャルは、はにかみながら水沢の前に置いたが、
「…って言う立場じゃ、ないっすけど…」
笑顔が消えたオッサンの仏頂面に、申し訳なさそう顔を伏せた。

「あ、ありがと」
若い娘に、煎れてもらうコーヒー、か…、
湯気が上がるコーヒーカップの、琥珀色に揺れる小さな湖面をしばし見つめた水沢は、あのウワサで会社の女子社員から総スカンを食ってから、コーヒーを煎れてもらうのは久しぶりだと思った。
「でも、なんでここが?」
そうだ…、なんで、ウチを、知ってる?…。
それでなんとなく気が抜けて、コギャルが来てからずっと感じていた疑問を、素の顔で聞いた。

「あ、それは、っすね」
無表情に聞くオッサンのもっともな疑問に、コギャルはますます申し訳なさそうに萎縮し、
「宅配便の…」
おずおずと顔を上げてオッサンの顔色をうかがい、コンビニで荷物を送ったときの伝票で、住所を知ったことを告げた。

「あ、ああ…」
そういうこと…、
出るところに出たら大問題になりそうな個人情報流出に、たいして拘泥せずに、謎が一つ解けて安堵のため息をついた水沢は、
でも、なんで来たんだ…。
いよいよ本題を聞かなければならないと思ったが、コギャルの戸惑う様子に、なんとなく重苦しい居心地の悪さを感じていた。

文庫本の彼女 (31)につづく
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