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鬼龍院サセ子探偵事務所 (40)今度は空から

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鬼龍院サセ子探偵事務所 (40)今度は空から

「あっちだ、やっとついたぞ」
暗闇の中を麻里と肌を寄せ合ってワクワクドキドキして歩いていると、前方に明かりが見えた。

「ああんっ、こわかったあっ」
「ああっ…、って、またサセ子サンかっ、麻里はっ?」
急に抱きつかれて温かい「もふもふ」を押しつけられてウヒウヒだったが、その声はサセ子サンだった。

「わたし、ここ」
「あ、ああっ、離れるなよ」
「うん、ゴメン…」
反対側の腕に抱きついてきた柔らかい感触に鼻息を荒くして恋人気取りで言うと、八頭身美少女も甘えてショートヘアの頭を寄りかからせる。

「うん、離れない…」
「アンタは、いいんだよっ、サセ子サンだったら、ナニが出てきても、例のアレで撃退できるだろっ」
二つのデカメロンで腕を挟み込むV字水着美女が甘えてなついてくるが、すかさずツッコミを入れて突き放した。

「ああんっ、里美君って、SM大好きなんだから、いやあ~ん、脱げちゃった…」
まわりは真っ暗で不思議美女のあらわな姿は見えないが、きっとセクシーポーズを取っているに違いないので、オレは麻里の手をギュッと握って先を急いだ。

「ええっ、なにこれっ、これじゃ、まるきり『ド○えもん劇場版』だろっ」
暗闇を抜けると太陽のまぶしい海岸だった。来た道を振り返るとまるでジュラ紀の密林で、ホントに恐竜ができてもおかしくない雰囲気だった。
「里美君、およご」
しかし危機感を感じているのはオレだけのようで、クラスメイトは男子女子入り交じってキャーキャー歓声を上げて水遊びしていた。腕に抱きついて甘えてくる競泳水着の八頭身美少女もすっかりリゾート気分のようだ。

わーっ、逃げろおっ…。
キャー、助けてえっ…。

「えっ、なんだっ、なんですとっ」
しかしそんなぬるい空気は恒例の異常事態であっさり消し飛んでいた。級友たちが逃げてくる方を見ると、B474級の巨大な飛行機が煙を噴いて近づいてくる。
「麻里っ、サセ子サン、逃げないとっ」
逃げるクラスメイトに置いて行かれまいと麻里の手を引いて駆け出す。相変わらずゆったりした笑顔で泰然自若なサセ子サンが目に入って声を荒げる。

「…、うー、やー、たあっ」
またまたギリシア神話のようなヒラヒラした衣装に着替えていたサセ子サンは、墜落してくる飛行機に向けた両手の平を胸の前で上下に合わせて回して押し出すと、少年○ェットまがいなミラクルボイスで撃墜した。
「ひいいっ、落としちゃったよ、この人っ」
オレたちに衝突するコースで不時着陸を試みていたと思われる旅客機は、サセ子サンの超自然力(スーパーナチュラルパワー)でたたき落とされ、海岸で炎上していた。

「なんてことすんだっ」
「だって、死にたくないでしょ」
民間旅客機にしか見えない航空機をあっさり撃墜した不思議美人に詰め寄ると、正当防衛は当然の権利と言いたげな口調だった。

「そんなこと言って、あれって500人ぐらい乗れるんだぞ」
「心配しなくて大丈夫よ」
どうにも納得できずに食い下がると、サセ子サンいつものゆったりした笑顔で応える。あるいは摩訶不思議な力で乗客全員をどこか安全な場所に移動させたのか、と一縷の望みを抱いたオレに
「高度11000メートルの成層圏から落ちてきたのよ、生存者の望みなんてないわ、L○STみたいな都合のイイコトなんて、現実にはあり得ないのよ」
優雅な笑みを浮かべるギリシア彫刻のような美女は、身も蓋もない鬼畜そのもののセリフでオレの希望的観測を木っ端微塵にしていた。

鬼龍院サセ子探偵事務所 (41) につづく
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