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== THE 歓喜天ホテル ==

THE 歓喜天ホテル (1)ホテルのロビー

ろま中男3 作品リスト
THE 歓喜天ホテル 目次

THE 歓喜天ホテル (1)ホテルのロビー

目が覚めるとやわらかいソファにカラダを投げ出している自分に気づいた。

どこかのホテルだろうか?…、来た覚えもないし、オレがここにいる理由が分からない。

広いロビーにはオレと同じくらいの若い男女がいた。何人いるかわからないが結構な数だ。誰もオレと似たような状況なのか不安げで、自分の置かれた状況が理解できずにとまどっているように見える。

周りを見渡しているとテーブルの灰皿が目に入った。タバコに火を付け一口吸った時に放送が流れ始めた。

「当ホテルの支配人でございます。突然のことで驚かれたことと思いますが、皆様の安全は保証いたしますのでまずはご安心ください。

皆様にはここで一週間暮らして頂きます。衣食住に必要なものはすべてこちらで用意させて頂きました。そして一週間後には皆様は元の生活にお戻り頂きます。

ここでの一週間をどのように過ごして頂いても結構ですが、ここでのことは一切他言無用にお願いします。他言された場合、皆さまの安全は保証できません。このことだけは固くお守りください。

また他のお客様に危険のおよぶ行為は厳しく対処致します。良識ある行動をお願い致します。
私どもの意図を汲んでそれに沿って行動された方は大金を手にすることができます。

それではご健闘をお祈りいたします。」

そこで放送は終わった。何者かによって連れてこられたらしい。誘拐されたとしたら犯罪ではないのか、安全は保証できないというのも明らかに犯罪のにおいがする。やはり犯罪がらみなのだろうか。

大金がどのくらいの金額なのか見当もつかないが、ホテルをまるまる借り切ってのイベントなら、それだけでもかなりの金がかかっているように思える。

よく分からないが、大がかりなたくらみに巻き込まれたらしい。こういう時にジタバタしてもしょうがないとオレは腹をくくって支配人の安全は保証するという言葉を信じることにした。

もう一度周りを見渡した。若い男女に混じってボーイ風の制服を着た男が何人かいた。一見して一回り以上年上なのは明白で、制服を着なくても若い男女の中で目立っていたかもしれない。

こっちを向いた男に手を上げると、ゆっくりと近づいてきて、
「ご用でしょうか」
男は丁寧に頭を下げた。

もう一度その男をじっくりと眺めてみた。ホテルのボーイにしか見えない。物腰も柔らかく危険な雰囲気はみじんも感じない。
「ここはどこなんだ」
オレはまだ警戒しながら聞いた。
「申し訳ごさいません、それにはお答えできません」
男は慇懃に応える。丁寧な態度だが感情を感じない冷たい感じがした。

「それじゃ、おまえは何のためにここにいる」
チョットむかついて挑みかかるように聞くと
「私は当ホテルのボーイでございます。お客様のお世話をさせて頂きます。ご希望のものがあれば、たいていのものはご用意できます。なんなりとお申し付けください」
威儀を正した男は見事な営業スマイルで応えた。

ボーイと名乗る男の顔をじっと眺めると、完璧な営業スマイルを返してくる。まだ状況はよく分からないが、その立ち振る舞いから一流ホテルのボーイを想像させた。
「何でも用意できるのか」
「お客様方に危険が及ぶものでない限り、ご用意できます」
「じゃあ、とりあえずコーヒーをくれ」
「かしこまりました」
ボーイは音もなくどこかに消えた。

周りの男女はオレたちのやりとりに注目していたようだ。次々にボーイたちを呼ぶと何か聞いているようだ。あらためて見回すと一級ホテルといっていい上品な内装だった。いつの間にかさっきのボーイがコーヒーを持って戻ってきた。
「お待たせいたしました」
慣れた手つきでコーヒーをテーブルの上に置いた。コーヒーのいい香りが鼻をくすぐる。

「今すぐ帰ることはできないのか」
コーヒーのアロマでやや緊張が解けたオレが聞くと、
「お客様は一週間後にお帰りになられるまで、当ホテルにてお泊まり頂きます。お客様が快適にお過ごし頂けるように、万全の準備をしております。どうかご自由にお過ごしください」
ボーイは姿勢を正して応えた。マニュアルを感じさせる口調だった。

「なんでも用意すると言ったが、金はくれるのか」
「お客様はこのホテル内で行動されたことが、逐次記録されています。お帰りの際にそれに応じた賞金をお渡しすることになっております。ホテル内でお買い物される際も、お部屋のキーを提示頂ければ、お金は必要ありません」
ボーイはオレのポケットを指し示した。ポケットの中を調べると部屋のキーがあった。3026とナンバーが振ってある。ということは30階以上あると言うことだろうか。

コーヒーを一口すすった。うまい…、コーヒーは間違いなく一流ホテルレベルだと思った。
「逐次記録ということは、常に監視されるということか」
「基本的にはその通りでございます。ただしお部屋に一人でいらっしゃるときは、お客様のプライベートを保証いたします」
ボーイがニッコリ笑って答えた。

一人でいる時ということは、他に人がいると監視対象になるということか。見知らぬ他人同士を集めたことの安全に配慮したためだろうか?…。
オレはコーヒーをすすりながら考えていた。コーヒーのせいか体が熱くなる気がした。空きっ腹のせいかもしれない。
「食事はできるのか」
まだ横に控えていたボーイに聞くと
「軽いお食事なら、ここでもご用意できますが、最上階にフレンチレストランがございます。その他の階にも和洋中のレストランをご用意してあります」
ニッコリ笑って答えた。

歓喜天ホテル (2) につづく
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