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== 大学教授美穂 ==

大学教授美穂 (22)安珍と清姫

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大学教授美穂 目次

大学教授美穂 (22)安珍と清姫

「う、ううんっ、…」
後藤が美貌の女教授に見とれていると、意識を取り戻したのか美穂は声を漏らした。

うわあっ、…。
後藤は危うく声を漏らしそうになってブルブル震えた。
バクバクと心臓が騒いで逃げ出すことしか考えられなかった。
美人教授の下着を履き替えさせることなどすでに眼中になかった。

美穂に意識が戻る前に逃げだそうと、足音を立てないようにこっそりとドアに近寄ると、
廊下に誰もいないことをせわしなく確かめて慌てて外に出た。

研究室に戻った後藤はドキドキと高鳴る心臓が、
早くおさまれと念じて机にうつむいていた。
しかし美穂に呼ばれた用事が済んでないことに気づくと
いつまでも行かないでいるのもおかしいと思った。
頃合いを見計らってもう一度教授室に行く決心をした。

意識の戻った美穂は自分のはしたない姿を見て慌ててブラウスの前をあわせた。
どこ?…。
たっぷりした胸の前で手を合わせた美穂は後藤を捜した。
しかし美穂の目に荒々しく自分を愛した男の姿は映らなかった。

ひどい、…。
はしたない姿のまま置いてきぼりにされた美穂は、
自分が床に転がった使用済みティッシュのように捨てられた気がして、
指先が冷たくなるような寂しさを感じた。

「あっ、…」
まなじりからこぼれた涙に気づいた美穂は濡れた頬をぬぐった。
泣いたのって、いつ以来?…、私、いつから、泣いてないんだろう、…。
手のひらを濡らす涙を見つめながら、
美穂は自分が久しぶりに泣いたことに気づいた。
狡猾な教授連からどんなにイヤガラセをされても弱音を吐かなかった自分が、
泣いていることが不思議な気がして手の甲をぼんやり見ていた。

「…教授、よろしいですか」
美穂がぼんやりしているとノックする音がした後藤の声がした。

戻ってきた、彼が…。
後藤の声に我に返った美穂はいそいそと服の乱れを直して教授席に座った。
「どうぞ…」
美穂はいつもよりトーンの高い声でその上語尾を上げて後藤の入室をうながした。
美人教授はほんのり頬を染めて少女のように胸を高鳴らせていた。

「…、資料を、お持ちしました」
後藤はドキドキしながら教授室に入った。
席に座って真っ直ぐに見つめる美穂にゴクンとツバを飲み込むと、
かすれ気味の声で用件を告げた。

「そう、ご苦労様…」
知らん顔してる…、さっき私に、愛してる、と言ったくせに…。
後藤の落ち着かないよそよそしい態度をじっと見つめていた美穂は、
綺麗な指を振って近くに来るように合図した。

美穂の視線にいたたまれない後藤は、顔を伏せて席の前に立った。
「…これ、です」
資料を指しだした手は震えていた。

何をおびえているの?…。
あんなにはっきり、私に告白したくせに…。
ひょっとして、無かったことにしたいの?…。
…、そういうことなの?…、私は弄ばれたの?…。
なんて、情けない男なの…、こんな、男に…、犯されたなんて…。

うつむく後藤をじっと見つめる美穂は後藤の情けない態度に腹が立った。
そしてこんな男にときめいた自分が情けなくて悲しかった。

…、いいわ、あなたが、そういうつもりなら…、私だって…。
愛しい人の訪問に恋する乙女のように胸を高鳴らせていた美穂は、
悲しみを怒りに転化して、燃え上がるような熱さに魅惑的な肉体を震わせた。

今の美穂は、裏切った安珍を恋の炎で焼き尽くす大蛇に変化した清姫だった。
道成寺と化した教授室で震えて立つ卑怯で小心者の万年講師が、
逃げ込む釣り鐘の代わりはどこにも無かった。

長いまつげに半ば隠れた切れ長の目は後藤に冷たい視線を向けていた。

大学教授美穂 (23) につづく
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