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女教師鈴子のルール 目次女教師鈴子のルール (38)泣き崩れる少年
「鈴子先生、おはようございます」
筑紫朝陽と別れて下駄箱で靴を履き替えているとダミ声がお尻に響いた。一回り以上年上の中年体育教師大山だ。
「ひっ、おはようございます」
お尻を嗅ぐようなセクハラ挨拶は毎朝のことながら慣れない。私は急いで向きを変えて頭を下げた。
「んっ?…、むむっ、臭うっ」
不気味な笑みを浮かべていた筋肉ジャージ教師は、険しい表情で胸元に顔を寄せるとフンフン鼻を鳴らした。
「えっ、なんですか」
ギクリとした。おちちに残る精子の臭いを嗅ぎつけたのだろうか。野生動物並みの嗅覚だ。脳みそが筋肉出来ているような体力だけが自慢の教師なのだが、だから動物的本能は常人の範囲を超えているということか。
「ところで今日は終業式ですね、終わったら…」
幸いそれ以上の追求はなかった。なにやら言っていたが無視した。
「遅れそうなので、失礼ますっ」
人間の範疇を超える生き物との接触は極力避けるのが身のためだ。私は急いでその場を去った。
「おはよう、金村先生」
前門の虎後門の狼、日本史の佐藤先生だ。胸元が大きく空いたボディコンドレス姿で私をジロジロ見ている。これも毎朝恒例だ。
「おはようございます、佐藤先生」
自分より目立つファッションじゃないかチェックしているのだ。私はさりげなく首に手を当ててボタンがはずれてないか確かめた。
「…、遅いわよ、もっと早く来なさい、新人なんだから」
彼女は不機嫌そうに小言を言ってからお尻をプリプリ振って自席に戻った。終業式の今日はスーツ姿なので文句の付けようがなかったようだ。あの子達に皺くちゃにされたスカートもセーフだった。
職員朝礼はいつも通り教頭の挨拶程度で終わって教室に向かった。
「おはよう、今日は終業式ね」
教卓でみんなを見渡す。元気がなさそうだが筑紫朝陽もちゃんと居る。
「すぐに体育館に行かなきゃならないけど、ちょっとだけ聞いて」
彼を除いていつもと同じ様子で安心した。やはり今朝あったことはちゃんと話をしなければならないと思った。
「なに?、そんな短い時間じゃ、いくらオレでもヌケないけど」
安芸山遊治が茶化して笑いが起こる。私の緊張を察して場を和ましてくれたのだろう。お調子者のようで彼は優しくていい子だ。
「それは終業式が終わってからゆっくりしてね、…、私は今朝、襲われました」
彼の小ボケに軽く突っ込んでから、朝陽のことを短く告げた。
「ええっ、オレたちのことっ」
「だ、だって、せんせい、いいって」
「あ、あのっ、ちょっと強引だと思ったけど…」
初体験した裕太が血相を変えて立ち上がる。卓治も焦って言い訳した。強制フェラの啓士が青くなって立ち上がって言いよどむ。昨日私に接触した子も決まり悪そうにしている。
「…、筑紫朝陽、前に出なさい」
あえて彼らを無視して朝陽を前に呼んだ。
「…、はい」
喉の奥から絞り出すような返事だった。朝陽はうなだれたまま来た。その姿は刑場に引き出される罪人そのものだった。
教室がざわつく。無理もない。普段の彼はおとなしい目立たない子なのだから。彼と強制猥褻や強姦まがいの行為が結びつかないのだろう。
「オマエ、何したの」
やはり遊治が口火を切った。さっきのふざけた様子はなく真面目な顔だ。
「筑紫、先生に何した」
学級委員の乃咲郁夫だ。遊治に先を越されたのが悔しいのかことさらきつい口調だった。あるいは私を心配してくれたのかも知れない。ちょっとうれしかった。
「ご、ごめん…、せ、せんせい、う…、ご、ごめん、ううっ、なさい…」
朝陽が崩れ落ちた。床にのめり込みそうにうずくまった彼は嗚咽を漏らして震えていた。浮かれた気持ちに冷や水をかけられた気がした。
これじゃ針のむしろだ。公開処刑だ。悪い芽は早めに摘み取るべきだと思ってしたことだが性急だった。なにより彼がみんなの厳しい目に耐えられないことを予想するべきだった。私は教師としての未熟さを痛感した。
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