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短編 目次短編 (105)雨の夜の女(8)
「ん、うう…、あっ、指っ」
雨が上がった次の朝、忠義はまぶしい朝日に目を覚ますと道ばたに座り込む自分に茫然としたが、慌てて左手を上げて見つめると
「あ、あった…」
薬指があったことにほっとしていた。
あ、リング…、
しかし指輪がないのに気付くと慌てて周りを見回したが、
…、そうか…。
薬指に最初からリングなどしてないことを思い出し、脱力して照れ笑いした。
「ん?…」
花?…、
安心してうなだれた忠義はあぐらをかいたマタの間から、白くて綺麗な花が凛として立ち、美しく咲いていることに気付いた。
?…、あ…。
そして朝日に照らされてまぶしいくらいに白い花びらには、輝く朝露とともにヌルヌルの白濁液がトッピングされていた。
夢?…、
昨日の幻想的で官能的な出来事を思い出して夢のように感じる忠義だったが、
…、花だったら…、
この花を見ているとあのキレイな横顔が脳裏に浮かんできて、愛おしい気持ちになってくる。
雨が、うれしいし…、カサなんて、いらない…。
そして霧雨に濡れて艶めかしく滴を垂らす彼女に、傘を差し掛けたときの迷惑そうな顔をぼんやり思い出していた。
それからの忠義は彼女がどうしても忘れられなくて、なんどか同じ時間にあそこに行ってみた。しかし彼女と会うことは二度と無かった。
忠義が彼女と会うのをあきらめた頃、あの場所には白くて綺麗な花が咲き乱れた。あのときと同じいい匂いのする花たちを見る忠義は、自分と彼女の子供のような気がしてなんだかしんみりした気分だった。
雨の夜の女 終わり
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