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短編 (100)雨の夜の女(3)

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短編 目次

短編 (100)雨の夜の女(3)

「ちょっと、こわいかもな…」
紀夫の怪談話が終わり、照明を付けて部屋が明るくなると、怪談話にビビってしまった気恥ずかしさで忠義はわかりやすく強がっていた。
「まあな…」
しかし紀夫は、忠義の動揺など興味なさそうなに無表情でビールを飲んでいた。


「じゃあな」
紀夫の部屋で飲んでほろ酔い気分の忠義が帰ろうと、
「あれ、雨…、カサ借りるぞ」
ドアを開けるとムッとする暗い空気に雨だれの音を聞いた。まだ5月だというのに夕方の蒸し暑い空気のまま、雨が降っていた。

「おお、でも、女が立ってても、声、掛けるなよ」
すっかり出来上がっていた紀夫は、カラカラ笑いながら怪談話を持ち出してからかっていた。
「あ…、ああ…」
思い出しちゃった、じゃねえか…。
怪談のことをすっかり忘れてた忠義は、蒸し暑い夜の麦雨にちょっと気味悪くなったが、考えないようにして家路についた。

暑いな…、
マスコミが騒ぐような異常気象なんて信じないが、この夜の天気は異常に感じた。カラダにまとわりつくような高湿度のネットリした生ぬるい空気は、息をするのもおっくうに感じる。
なんか、ヤケに静かだし…。
カサに当たる雨粒の音はほとんどしないし、細かい雨粒に遮断されているのか、騒音も聞こえてこない。

ん?…、
車もほとんど通らない林の道を歩いていて、ふと先を見ると
女?…。
霧雨に煙る街灯の下に女が立っていた。

で、出た…、
すぐに怪談話を思い出した忠義は、傘の下からおそるおそる様子をうかがう。
…、おいおい…。
街灯の照明に白く浮き上がる女は怪談のように傘も持たずに雨に濡れ、スリムな女体を立たせていた。

ホントかよ…、
最初はおっかなびっくりだったが、酔っぱらって多少気の大きくなっていた忠義は、こわいもの見たさで立ち止まってしばし見つめた。
でも…、いい女だ…、
落ち着いて見るとずいぶん美人だった。夜目遠目傘の下というが、傘の下ではなく街灯に照らされた女はかなり美人で、某大物俳優の娘で妖怪アニメの実写版に出演していた人気女優に似ていた。

しかも、いいカラダだし…。
そして胸の谷間を強調するスリップドレスのような生地の薄い服が、雨に濡れてカラダに張り付き、艶めかしい曲線をはっきり見せていた。この時点で怖さよりもスケベが勝っていた。

短編 (101)につづく
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