ろま中男3 作品リスト ← 初めての方はこちらをご覧下さい。
短編 目次短編 (99)雨の夜の女(2)
「これ?」
左手には何も持っていないというつもりで、そいつが広げた手の平をヒラヒラさせると、
「これ…」
うつむいて濡れ髪で顔が隠れた女はゆっくりと手を上げて、薬指で鈍く光るリングを指差した。
「え…、これは…」
それは彼女と揃いのペアリングで、前もって外しておくべきだったと後悔したそいつが、言いよどんでいると、
「返してえっ」
当然大声を上げた女は男に襲いかかったっ…。
「ひいっ」
大声とともに顔を上げて口元をゆがめてにらみつける紀夫に、身じろぎもせず話を聞いていた忠義はビビってのけ反った。
「…」
紀夫はビビる忠義をチラ見したが、さらに話を続けた。
…、次の朝、護岸で薬指を食いちぎられた男の死体が見つかった。
不思議なことに、食いちぎられた指も、その指にしていたリングも見つからなかった…。
紀夫の話は続いていた。
…、数年前、他に女が出来て今の彼女と別れようとした男が、女にプレゼントした指輪をこっそり持ち出して、指輪を無くしたと彼女を口汚くなじってムリヤリ別れた。
彼女は必死に指輪を探したが、男に盗まれているから当然見つけられず、とうとうノイローゼになった彼女は、蒸し暑い雨の夜に海に身を投げ、自殺したそうだ。
それ以来、蒸し暑い雨の夜になるとその女が現れて、指輪をした男を呪い殺す、ということらしい…。
話を終えた紀夫は、無表情にチラリと忠義に目線を向けると、ふっと息を吹いてロウソクを吹き消した。
短編 (100)につづくブログランキング ケータイの方はこちらから1日1クリックご協力をよろしくお願いします。(別ウインドウが開きます)
にほんブログ村 1日1クリックご協力をお願いします。(別ウインドウが開きます)
- 関連記事
-