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短編 (48)下着ドロ(11)

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短編 目次

短編 (48)下着ドロ(11)

「これ…」
沼が後ろに隠し持っていた花束を差し出す。亜樹は気付かなかったが、亜樹の歳の数と同数のバラだった。

「何ソレ、先生、似合わないよ…、ひょっとして、指輪もあったりして…」
なんだ?…、プロポーズか?…、誰にするんだよ、このスケベオヤジ…。
頑固オヤジと花束という想定外の組み合わせについ笑ってしまった亜樹は、誰かにプロポーズするのかと妄想し、ニヤけた笑顔で冷やかしていた。
「あ、ああ…、あるぞ…」
小さく咳払いした沼は、ポケットから指輪ケースを取りだした。

「なあにっ、先生、誰と結婚するの?」
いい年こいて、このどスケベがっ…。
思わぬ慶事にニヤケ顔をさらにゆるませた亜樹が、無責任にはやし立てる。
「あ、ああ…、オマエとな」
はしゃぐ亜樹を、ちょっと目を伏せて覚悟を決めた沼は、真剣な顔で見つめた。

「へ?…」
おまえって…、亜樹のこと?…。
いきなり当事者にされて混乱した亜樹は、大きく目を見開いたファニーフェイスを見せていた。予期しない展開にフリーズした亜樹に沼が花束を押しつけ、
「亜樹、結婚しよう」
真面目な顔でプロポーズした。

「はっ?…、チョット待って、それに、私、今、待ってる人がいるから、だからっ」
なんだ、なんで、結婚?…、先生、なにを、いきなりっ…。
バラの花束を受け取ってしまった亜樹は、混乱しながら饒舌になっていた。
「それ、オレだから」
焦る亜樹の肩を抱いた沼が、照れたように笑っていた。

「だって…、今日死ぬって…」
だから、わからんっ…、亜樹は、「呪いのメール」の送り主、待ってんだぞ…。
まだ全然納得できない亜樹が、例のメールを持ち出して、食い下がると
「そうだ、『教師沼』って入力したつもりだったんだが、『今日死ぬま』って変換されたのが面白くてな…」
署名のつもりがおかしな変換されたのがおもしろくて、悪ふざけであんなメールを送ったことを説明した(が、告白のいいアイデアが浮かばなくて、半ばヤケ気味に「呪いのメール」を送ったコトは黙っていた)。

「?…、『教師沼』が、『今日死ぬ』に、なったってこと?…」
ん?…、そういうこと?…。
「呪いのメール」を思い出しながら、沼の説明を懸命に理解しようと寄り目で考え込む亜樹だった。
「じゃあ、先生が、ストーカー!?…」
ずっと見てたってこと…、しかも、先生に…。
恥ずかしいトコロをさんざん見られた上に、高校の時の担任とエッチまでしてしまったことを理解した亜樹は、恥ずかしくて顔を上げられなかった。

「ああ、オマエ、無防備すぎるぞ…、着替えるときはちゃんと窓、閉めろよ」
猫背気味にモジモジする亜樹がかわいくて、つい笑ってしまった沼は
「せんせい…、ちょっといい?…」
うつむきがちに声をかける亜樹に
「なんだ?」
幸せそうな笑顔で不用意に応えた。

「このっ、ど変態があっ」
許さんっ…、
花束を手放した亜樹はタイトミニスカの足を沼に絡めると、ワキの下に手を通して伸び上がり、コブラツイストを決めた。
「ぐっ…」
すっかり油断していた沼は、強烈なプロレス技に苦痛にくぐもった声を漏らす。
「ホントに、こわかった、んっ、だからあっ」
変なメール、送りやがってえっ…、喰らえっ…。
カラダをゆすって締めつけをキツクした亜樹は、沼が気絶するまで許さなかった。


亜樹の当て身で意識を取り戻した沼は、平身低頭で謝って許してもらうと、ローターを取り出しにラブホに亜樹を連れて行った。そのまま流れでエッチに突入した二人は、その後も交際を続けて数ヶ月後には幸せな結婚式を挙げた。

ちなみに下着ドロだと亜樹が思ったパンティは、下から見上げていた沼の上に落ちてきたモノで、もちろん沼が2階までよじ登ったのではないし、写メの裸の下半身写真は、ネットに転がっていたそれらしいモノを加工しただけだった。

下着ドロ、終わり

短編 (49)につづく
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