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== 大学教授美穂 ==

大学教授美穂 (75)病室のバカップル

ろま中男3 作品リスト
大学教授美穂 目次

大学教授美穂 (75)病室のバカップル

「美穂さんっ、大丈夫ですか?」
美穂が目を覚ますと
真田の心配そうな顔がのぞき込んでいた。
充血した目と頬には涙の跡がある。

「ここは?…」
手を握る強いグリップに目線を向けると、
腕に点滴の針が刺さっているのが見える。

「美穂さん、倒れたんです」
その目線を追った真田はあわてて力を緩め、
大事そうに美穂の手を握る。
うれしそうな笑顔の目尻から涙がひと筋こぼれた。

「ここ、病院?…」
真田のうれし泣きの顔を無表情に見つめる美穂は
もう一度聞いた。
「はい、救急車で…」
笑顔で応えた真田だったが、
そこまで言うとボロボロ泣き出した。

「ちょっと、落ち着いて、大げさよ」
手にすがって嗚咽で肩を揺らす真田を
美穂はあわててなだめる。
「あっ、はっ、うっ、すいませんっ」
美穂の声に顔を上げた真田は涙をぬぐうと、
また泣き笑いの顔で美穂を見つめた。

「…、それとも、私、悪いの?」
感極まった真田と対照的に
美穂の冷めた声が病室に静かに響く。
「えっ…、いや、大丈夫ですっ」
「美穂さんは、カワイイおばあちゃんになるまで、長生きします」
美穂を不安にさせてしまったと思った真田は、
あわてて説明していた。

「…、ねえ、ホントのこと言ってよ」
何度目かのセリフにチョット笑った美穂だったが、
真顔に戻って問い詰めるように真田の顔をのぞき込む。

「いやっ、スイマセンっ、違うんです…、ホントに、大丈夫なんです」
美穂の強い視線に後ずさった真田は、
二度と美穂が目を覚まさないのでは、と不安な妄想に駆られて、
泣いてしまったことを必死に弁解していた。

「じゃあ、これはなんなの?…」
要領を得ない真田に
美穂は講義でダメ学生に質問するときの
厳格な大学教授の顔で、
腕に刺さった点滴の針を目配せした。

「それはタダの点滴…、栄養剤…です」
文学部の院生で医学の知識のない真田は、
美穂から目をそらして応えた。

「…、ホントのこと、言って、お願い」
自信なさげな真田の態度にますます自分が重篤な状態なのか
と不安になった美穂は、
すがるような目で問いただした。

「スイマセン…、ホントにたいしたことないんです…」
「美穂さんは、過労です…、あと…」
美穂を不安にさせたのが申し訳なくて、
まともに顔を見られない真田は顔を伏せたまま応えた。

…、確かに、最近疲れ気味だったわ、…。
論文にかかり切りでまともに休みを取ってなかったので、疲れがたまっていたのは自覚していた。今朝あんなに気分が良かったのは真田とうまくいったせいで、逆に昨日からいろんなコトがありすぎて、疲れは最高潮にたまっていたのだと納得した。

そのせいで、気分が高揚していたのかも、…。
あるいは疲れがたまりすぎて脳内麻薬が分泌されたためにハイになっていたかもしれないと、真田よりよほど医学的な知識がある美穂は考えていた。

「でも、あと、ってナニ?…」
そこまで考えた美穂は言いよどむ真田を見つめた。
「あの…、落ち着いてくださいね…」
真っ直ぐ見つめる美穂に、真田はモジモジしていた。

「男でしょ、はっきりしなさいっ」
少し癇癪気味に美穂が声を荒げると
「はいっ、教授は更年期障害…、の疑いがあるそうです」
ビクッとして姿勢を正した真田は
講義で詰問される学生のように応えた。

「更年期障害…、って中年女性がなる、アレ?」
美穂はこれまでまったく意識しなかったその病名に、
呆然として聞き直していた。
「…、そのようです…」
申し訳なさそうな真田が、
美穂の様子をうかがうように不安そうに見ていた。

「もう、やだっ、やっぱり私、ババアなのねっ…」
真田にワガママな態度を見せて来た美穂は
急に恥ずかしくなって、
シーツをかぶると駄々をこねた。

「…、でも最近は若い女性でもなるそうですから…」
「だから…、教授はババアなんかじゃ、ありません」
真田は美穂の機嫌が良くなるようにと、
必死に医者の説明を思いだしながらしゃべっていた。

「ウソよっ、教授なんて他人行儀な言い方してっ…」
「ババアだと思ってるからでしょっ」
恥ずかしくてどうしようもない美穂は、
相変わらずシーツをかぶって駄々をこねていた。

「あっ、すいませんっ、違うんです、美穂さん…」
「美穂さんは、若くて、キレイです」
機嫌を直してもらいたい一心で、真田は必死に言い訳していた。

「ホント?…、じゃあ…、チューして…」
真田の一生懸命な声に少し気分の良くなった美穂は、
半分だけシーツから顔を出すと甘えた目でチラ見した。

「へ…、あ、はい…、それでは、失礼します」
ワガママを言う美穂が
どうしようもなくカワイク感じた真田は
ドキドキしながらシーツを下げると、
わずかに開いたプックリした唇に近づいていった。

「おっ、ほんっ」
そこで病室のドアが開いて、
若い女医が呆れたように二人を見ていた。

咳払いにあわてて体を起こした真田は、
照れ笑いを浮かべて女医に会釈した。

赤っ恥をかいていたたまれない美穂は
またシーツをかぶってぎゅっと目を閉じていた。

大学教授美穂 (76) につづく
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