2ntブログ

== 大学教授美穂 ==

大学教授美穂 (64)後藤のこと

ろま中男3 作品リスト
大学教授美穂 目次

大学教授美穂 (64)後藤のこと

教授、って…、さっきは美穂って呼んでくれたのに、…。

教授と呼ばれた美穂はピクッと震えた。
なんだか突き放された気がして
よけいに気持ちが沈んでいった。

「どうぞ、ガムシロップいる?…」
氷をたっぷり入れた大きめのマグカップを
真田の前に置いた美穂は、
目線を合わせないようにして熱々のコーヒーを注いだ。

「いえ…、いただきます」
重苦しい雰囲気が息苦しくて、
きしむ音を立てながら氷が溶けていくのを
真田はじっと見つめていた。

「それで、なんでしたっけ?…」
真田は一口すすると、
自分の分を入れて目の前に座った美穂に
おそるおそる視線を向けた。

「…、あのね、その…」
自分から重苦しい空気を作ったコトに気付いてない美穂は、
真田の元気がなくなってよけいに言いだしにくくなっていた。

「何でも言ってください、覚悟は出来てます…」
逡巡する美穂に別れ話を切り出す雰囲気を感じた真田は、
まだつきあってもいないのに別れ話なんておかしいと思って、
カラ元気を奮って明るく聞いた。

「うん…、後藤のことなの」
覚悟という言葉がちょっと引っかかったが、
明るい笑顔に後押しされて
美穂はやっと本題を切り出すことが出来た。

「はい?…、あ、助手の後藤さんですか」
想定外の人の名前に真田は意外そうな顔をした。
しかし美穂に後藤が想いを寄せていることに
何となく気付いていた真田は、
緊張気味に美穂がその先を続けるのを待った。

「そう…、助手の後藤…」
真田の顔から明るい笑顔が消えて、
いたたまれない気持ちの美穂は
目を伏せてオウム返しに応えた。

「あの…、後藤さんと、つきあってるとか…」
少女のように心細げに佇む美穂が
かわいそうに感じた真田は、
場を和まそうとして冗談半分で言ったのだが、
言ったすぐ後にいわば恋敵である後藤を
冗談でも美穂とつきあってるなんて、
言わなきゃ良かったと後悔した。

「えっ…、どうして」
しかしそれをまともに受け取った美穂は
ビックリしたように顔を上げて、
落ち込み気味な真田を見つめた。

「いや…、あの、冗談です…、すいません…」
美穂の反応にドキマギした真田は、
美穂の真剣な顔をこわごわ見つめていた。
「つきあってないわ…、でも…」
真田の不安そうな視線をなんとか受けていた美穂は、
絞り出すような声で応えていた。

「そうですか…、でも…、なんですか?…」
つきあってないと言いきった美穂に安心した真田は、
やっと普通に笑って聞き返すことが出来た。

「あのね…、ゴメン、ゆるして…」
言いかけて真田の笑顔を見た美穂は、
いたたまれなくなってテーブルに顔を伏せると泣き出した。

大学教授美穂 (65) につづく
ブログランキング ケータイの方はこちらから
ブログランキングバナー1日1クリックご協力をよろしくお願いします。
関連記事
┗ Comment:0 ━ Trackback:0 ━ 18:00:37 ━ Page top ━…‥・

== Comment ==






        
 

== Trackback ==

http://aosaga9.blog.2nt.com/tb.php/1194-d4392b8f
 
Prev « ┃ Top ┃ » Next