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女子校生アヤ (1)高校入学

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女子校生アヤ (1)高校入学

新しい同級生たちに囲まれて体育館にきれいに並べられたいすに座った多政アヤは、校長の講話を誇らしい気持ちで背筋を伸ばして聞いていた。後ろの席でアヤを見守っているだろう両親がうれしかった。アヤは今日高校に入学した。

今日から、アヤも高校生か、…。
アヤはきっとなにかイイコトがあるはずだと期待に胸をふくらませて、新しい学校生活にドキドキしていた。チョット厚めの唇が知らずに笑ってしまって、愛嬌のある笑顔を見せていた。


中3の担任から成績はギリギリだと言われたが、あこがれだった制服を着るために受験勉強をがんばった。そのおかげかアヤは第一志望の高校に合格できたが、一緒に受けた佐織が不合格だった。合格発表に自分の番号が見つけられずに泣きじゃくる佐織をずっと慰めていたので、合格のうれしさを実感できたのは、佐織と別れて家に電話して母の喜ぶ声を聞いた時だった。その後佐織に電話しても、佐織は会ってくれなかった。

小学校からずっと友達だと思っていた佐織が急に冷たくなったのは寂しかったが、今しつこくするとかえって佐織を傷つけると思ってしばらくこちらから連絡はしないでおこうと思った。高校に合格して楽しいはずの春休みも、なんとなく沈鬱な気分だった。

本好きのアヤは春休みの間、ずっと図書館に通っていた。好きな本を読んでいると落ち込んだ気持ちも忘れることが出来た。本に熱中しすぎて時間を忘れて、帰りが遅くなって暗くなってから家に着くこともあった。母は
「もう中学生じゃないんだから」
と叱ったりはしなかったが、優しい母を心配させたくなかったのでそれからは帰りが遅くならないように気をつけた。

高校入学の前の日はいつもより早くお風呂に入って新品の下着を下ろした。新品のブラは胸を締め付けて痛い気がしたが、鏡に映った真っ白な下着を身につけたスリムなカラダを、アヤは大きな目で見ているとなんだかワクワクした。早めに寝床に入ったがドキドキして、その夜はなかなか寝付けなかった。

朝、目覚ましより早く目が覚めた。中学の時よりずっと短くなったスカートはちょっと恥ずかしかったが、新品のセーラー服を身につけるとなんだか急に大人になった気がした。中学の時より40分は早く家を出たが、それは通学時間が長くなったからだ。隣町にある高校に通うには山を一つ越えなければならない。

中学でテニス部だったアヤは体力にはそれなりの自信があると思っていたが、10分以上も続く登り坂はさすがに堪えた。4月の朝のまだ肌寒い風を感じながら額に汗を浮かべたアヤは、しかし坂を登り切ったところで眼前に広がる風景に圧倒されてしばらく見とれていた。このときの感動はきっといつまでも忘れないだろう。

すごいっ、キレイ、…。
民家のまばらな木立に囲まれた下り坂の先にある狭い町並みの向こうに、輝く海が広がっていた。まぶしい朝日に照らされて波を立てる海は、まるで無数の真珠がはじけるように輝いていた。キツイ坂を上りきったあとの荒い息や高鳴る鼓動がよけいに興奮を高めたのかも知れないが、キラキラ光る朝の海はまぶしくて息をのむほどキレイだった。新しい何かが始まるような、充実した高校生活を予感させる絶景だった。

この景色が毎日見られるなら、キツイ坂道のある通学路も楽しみになる、…。
アヤはドキドキと高鳴る胸を意識しながら、そう思った。

女子校生アヤ (2) につづく

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