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痴漢電車の女たち 2.まさみの場合(27)

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痴漢電車の女たち 目次

痴漢電車の女たち
2.まさみの場合(27)運転手付きの高級車

駅への道のりから外れた経路を行く山本くんの後ろをウキウキしてついていくと、彼は「乗って」と車の横で止まりました。

私は「これ…、山本くんちの車?」思わず聞き返しました。乗ったこともない大きな車で、運転手が後部座席のドアを開けて待っていたからです。「そうだよ」とこともなげに呟いた彼は、挨拶する運転手を無視して入っていきました。私はうやうやしく頭を下げる運転手に恐縮して「すいません、失礼します」と謝って、彼の隣に座りました。

豪華なレザーシートのふかふかした座り心地に落ち着かない私が、「山本くんのお父さん、何してる人?」と聞くと「学校の理事長」と教えてくれました。「え、どこの?」と続けると「どこだっけ、小岩川」と運転手に聞きました。60を過ぎていそうな初老の運転手の小岩川さんを呼び捨てにする山本くんは、結構な資産家の御曹司なんだと思いました。彼との結婚を夢見て浮かれていた私は山本くんの下の名前もうろ覚えで、彼のことを何も知らないのだといまさらながら痛感しました。

小岩川さんが「お坊ちゃま、私立名泉高校学園でございます」と教えてくれました。ビックリしました。そこはウチの学校の系列校でしたから。というかウチが系列の末端で、名泉は本部が置かれた伝統ある名門校です。お父さんがそこの理事長ということは、関連校で働く一介の化学教師である私にとって雲の上の人も同然です。理事長であるお父さんを怒らせたら、私のクビなんて簡単に飛びます。

私は彼の家に行くのが急に怖くなって「そんな偉い人、だったの」と萎れました。彼はいつもの無表情で「え、別に、ただのスケベなハゲのオッサンだけど」と、天上人を貶す毒舌を吐きました。さすがに雇い主の悪口を放置できなかったようで、小岩川さんは「お坊ちゃま、旦那様はご立派な方ですよ」と柔和な口調で言うと「末っ子のお坊ちゃまは、旦那様に一番可愛がられていますから」と付け加えました。

「はあ」とため息のような声で応えた私はますます縮こまっていました。いたたまれなくて窓の外を見ると道路の横を線路が走っています。車の行先は通勤電車の進行方向とは逆で「あれ、なんで」と呟いていました。「お坊ちゃまは、麻沙美様と一緒の電車に乗るために…」と小岩川さんが言いかけると「小岩川」と山本くんは制止しました。「はっ、申し訳ありません」と口をつぐんだ小岩川さんは、それから軽口を言わなくなりました。

朝の満員電車で山本くんが痴漢してきたのは、わざわざ私の乗る電車の駅まで小岩川さんに送ってもらっていたのだと直感しました。山本くんはそこまでして私のお尻を触りたかったのかと思うと、嬉しくなりました。仏頂面で感情を見せない彼ですが、私は愛されている気がしてさっきまで感じてた不安が消えていました。

痴漢電車の女たち 2.まさみの場合(28)につづく

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